本日はA&DのGX-Z9000の修理です。
この機種は現在でも非常に人気が高く、AKAI自慢の耐摩耗性のGXヘッドを装備するとともに、バイアス調整やdbxも搭載され、耐久性、音質面が優れているほか、デザインも薄型でどんなインテリアにもマッチします。
AKAI時代のGX-93との違いは、アウトプットがFIXになったことと、アンプ部のICにシールドが施されているところです。
発売当時は圧倒的にブラックが売れていたようですが、シルバーモデルも存在します。
故障の多くは、ベルト類劣化によるトレイ開閉不良、走行不良のほか、ボリューム・テープセレクタ接触不良によるものが原因であることがほとんどです。
今回修理依頼のあった機体は、電源を入れると、「ウー」と唸ったきり、まったく作動しません。おそらく唸っているのはトレイ開閉用のモーターでしょう。
それでは修理に入ります。
カバーと全面パネルを外します。上部基盤の真ん中辺りがスカスカですが、ここには下位機種のGX-Z7000ではキャプスタンモーターのコントロール回路が組み込まれますが、GX-Z9000はクォーツロックですので不要なためです。
メカを取り出して、右側パネルのネジ2本を緩めてカセットホルダーを外します。
背面です。「AKAI」とスタンプされているパネルを外します。
ダブルキャプスタンのフライホイールがベルトで結ばれています。右側がDDモーターです。
キャプスタンベルトはまだ使えそうですが、汚れがひどいので交換します。
ベルトの当たり面が汚れていますので、ピカールなどの研磨剤で磨きます。
左側のみ透明のスペーサーが付いています。
このベルトの劣化によりトレイ開閉に不具合が生じますので新品に交換します。
テープセレクターの検出スイッチの接点が汚れていますので、スイッチを取り外して接点の清掃を行います。
背面部を元通りに組み立て、今度は前面です。
本来、写真の中央部にあるべきブレーキパッドがありません。これが無いとテープ走行が安定しません。
左側リールを外しました。
灰色のフェルト製のパッドが外れそうです。強力な接着剤でもとに戻してやります。
次はピンチローラーの可動部を点検します。大抵はグリスの劣化により固着しています。
この機体は右側のみ固着しています。ガチガチでビクともしませんので、ハンダゴテで温めながら慎重に分解します。
外れました。ガビガビですね。固まったグリスをCRCを浸み込ませた綿棒でふき取り、シリコングリスを塗布し組み立てます。
ピンチローラーにテカリが出ていたので、専用のクリーナーで清掃します。かの有名な「アメリカンレコーダーテクノロジーズヘッドクリーナーS-721H」です。
硬くなったゴムに浸透し柔らかくする性質を持っているとのことです。
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消磁も施し、ヘッド周りはOKです。
メカを本体に戻し、動作点検です。ボリューム類がダメになっていることも多いので、併せて点検します。動作良好です。
クオーツロックですが、念のためテープ速度をチェックです。0.1%と誤差の範囲内です。
アジマスもオッケーです。
最後に録再音量など点検し修理完了です。