以前、機器を当店で購入されたお客様から、所有している別の機器の修理依頼を受けました。機種名はDTC-1500ESです。再生不可、LINE-IN(Lch)反応なし、とのことです。
重厚感があり一度は所有したいデッキではないでしょうか。重量も17.5kgと作業場の2階に持ち込むのもひと苦労です。
中身も凄いです。トランスがアナログ・デジタル回路それぞれ専用に設けられています。
LINE-INの不良については、端子からケーブルが外れていました。製造時の半田不良が原因ですね。
標準のスポンジ製ヘッドクリーナーが付いていますので、最近の修理歴は無いようです。
メカ部を取り出して作動状況の確認を行います。カセットがセットされ、テープが引き出されます。ヘッドが回転しますが、再生ボタンを押してもテープが走行しません。
テープガイドは正規の位置まで移動しますので、ベルトの劣化ではありません。リールモーターの不具合を疑い、カセットを挿入せずに動作確認しましたが、左右リールは勢いよく回転します。ところが、キャプスタンが回転していません。
キャプスタンモーターの故障かと思い、手持ちのものと換装しましたが一向に動きません。ということは基板です。
手前側の基板がドライブボードです。リールモーターやキャプスタンモーターの制御を行っています。よく見ると基板の端が茶色く濡れています。
これはDTC-1500ESのウィークポイントのひとつで、基板実装型電解コンデンサーの液漏れが原因です。これまでリールモーターが動作しない不具合はいくつか見てきましたが、キャプスタンモーターは初めてです。
あいにくDTC-1500ESの回路図は持ち合わせていませんが、この辺りはDTC-77ESの回路と同一なので、それを参考にすると、Q517辺りがキャプスタンモーター関係のようです。
よく見ると、Q517とR540と書いてあるところの中間にスルーホール(基盤の表面と裏面を接続する穴)が黒く腐食しています。
そこで、回路図とにらめっこしながらその場所の導通をテスターでチェックしたところ、やはり絶縁しています。これが故障の直接の原因です。
絶縁部を仮にバイパス(写真右の青いケーブル)しました。これで正常に動作するようになりました。
修理はこれで完了ではありません。このまま不良コンデンサーを放置しておくと、次々に基盤が腐食し、取り返しのつかないことになりますので、基板をクリーニングしコンデンサーを新品に交換しなければなりません。
オーナー様に了解をいただきましたので、部品をネットで注文を終え、あとは到着待ちです。
(つづく)