A&DのGX-Z9000の修理依頼をいただきました。
症状は、「テープが入らず、入っても取り出し不可」「再生時、コトコト音が気になる」とのことです。
機器が到着しました。トレイが開かないためテープが閉じ込められています。これを無理やり開けようとすると、テープガイドやトレイ蓋の破損に繋がります。無理は禁物です。
カバーを開けて、メカを固定している上下のビスを外し、メカを少し前にずらします。これでトレイ蓋を外すことができます。
メカを取り出しました。左側のテープガイドが引っかかってトレイが開きません。
右側のピンチローラーアームが固着していることが原因のようです。ピンチローラーを指で押し下げて、テープを救出しました。なんと「Metal Master」です。持つとずっしりと重いのがわかります。
長期間テープが閉じ込められていたせいか、カセットを固定する樹脂製ダンパーがかなり変形しています。これではカセットハーフが不安定になり音質も安定しません。
加熱し整形します。
つづいて不具合のあるピンチローラーとヘッド周りの整備に移ります。この右側のピンチローラーアームの動きが重くなっています。
可動部には古いグリスが固着しています。すべて除去し再グリスを施します。
ピンチローラーも専用クリーナー「S-721H」でメンテナンスします。「スベスベ」から「しっとり」に変わります。
左側リールのブレーキパッドに不具合はありません。
左右リールを駆動するアイドラーには段差ができています。これが「コトコト音」の原因と思われます。もちろん新品(代替品)に交換です。
続いてメカの背面に移ります。
フライホイールはベルトの当たり面を清掃します。
キャプスタンベルト、カムモーターベルト共に状態は悪くはありませんでしたが、折角の機会ですので新品に交換します。国内の製造業者に特注したベルトです。
酸化しているオートテープセレクターの検出SWの接点をクリーニングします。
元通りに組み立て、本体に取り付けし動作チェックを行います。良好です。
テープ速度はクオーツロックですので問題はありません。
アジマスを調整します。この後、録再調整に入った時点で若干不具合が確認されました。入力バランスがメーター読みでひとコマほど狂っています。このままでは、バランスVOLが常に傾いた状態となってしまいます。
そこで、メイン基板を外し、
INPUTの33kの抵抗を100kの半固定抵抗に交換し、バランスを取ります。
バッチリ合いました。
最後にケーブル類を元通りに束ねます。
修理完了です。動作音質ともに良好です。GX機の不調でお悩みの方は当店にご相談ください。