今月に入って2台目の9100ですが、こちらはEXです。
無印の9100と比較すると、このカセットリッドのデザインが異なることと、
左はEXです、メカ、ヘッド、基本的な回路は同じですが、リレーやコンデンサーなど使用されているパーツが一部異なります。
今回の修理依頼の内容ですが、元々は現オーナー様がオークションで入手したもので、最近テープ走行が不良となったとのことです。早速修理に取り掛かります。
カムベルトが滑っているせいかトレイが開きません。むりやり開けると破損しますので、右写真のように指でプーリーを回してやるとトレイが開きだします。
メカを取り出します。トレイが外れかかっていました。
この写真はメカを横から写したものですが、トレイのガイド部のワッシャーが片方欠落しています。内部を探しましたがありません。このパーツは分解時に紛失しやすいパーツですが、代わりになるものがありませんので、ジャンク機から調達しなければならない貴重品です。
まずは、いつもどおりトレイのメンテナンスを行います。右写真はカセットハーフの振動を吸収するカセットスタビライザーです。無印の9100にも装備されていますが、EXでは写真のようにイボイボ仕様となっています。
トレイのダンパーのヘタリは比較的少ない方でしたが整形します。
ヘッド周りを分解していきます。ピンチローラーアームの固着はありませんでしたが、よりスムーズに動作するように古いグリスを除去し、再グリスを行います。
滑らかに動作するか確認しながら組み立てていきます。
ピンチローラーは表面がツルツルになっていますが、弾力は失われていませんので軽く研磨し専用クリーナーで処理します。
ヘッドブロック、ピンチローラーの順に取り付けます。
続いてアイドラーゴムの交換です。
硬化し表面はツルツルです。新品の代替品に交換します。
ここで少し問題が見つかりました。左右リールのアイドラーゴムが当たる部分が紙ヤスリか何かで表面が荒らされています。おそらくアイドラーゴムの劣化によりスリップが発生したため、摩擦力を高めるために処理したものと思われます。とりあえずはこのまま再使用してみます。
リールモーターのこの部分は元々ギザギザ処理されていますが、汚れや摩耗でスリップしやすくなっていますので、この部分は表面を荒らします。
続いてメカ背面のメンテナンスに移ります。基板が誤まった状態で取り付けられていました。
まずはカムモーターのベルトですが、5~10年に一度は交換が必要です。
キャプスタンベルトは比較的新しいものが付けられていましたが、せっかくの機会ですので交換します。
ベルトの当たり面も清掃済みです。ここをあまり磨くとベルトの脱落やワウフラッター悪化に繋がるという方もいらっしゃいますが、以前、私が実験したときはまったく影響はありませんでした。いずれにしてもゴムカスが付着しているときは除去が必要です。ただし、電動工具を使用しての研磨は行うべきではないと思われます。
このオートテープセレクターの接点もGX機のウイークポイントですが、一度はメンテナンスされているようで、状態は比較的良好でした。
左側ピンチローラーを脱着したときはテープパスの調整が必要ですので、本体に組み込む前にこの状態で調整します。なぜか脱着していない右側のテープガイドの位置も微妙にズレが認められました。
メカを本体に組み込んでテープスピードの点検とヘッドアジマス調整を行います。
バイアスキャリブレーションの作動状況は良好です。続いて録再チェックを行いましたが、ここで問題が発生しました。メカから耳障りな異音が聞こえてきます。通常で発生する動作音とは明らかに異なります。手で左側のリールを回すと同様の音がでましたので、やはり前述のリール部とアイドラーゴムの当たり面が原因のようです。状況を観察しているともうひとつ不具合があることがわかりました。テープの最終部になると音が震えます。
この症状は、バックテンションが強すぎるときに発生します。要するに、ブレーキパッドとリールの摩擦力が強すぎるということです。バックテンションの調整はスプリングの位置で強めることはできますが、弱めることはできませんので、リールを交換するしかありません。
左は元々のもの、右は取り付けたものです。念のため左右とも交換します。
異音も音の揺れも無くなりました。修理完了です。