本日は久々のDTC-77ESです。
約1年ぶりにテープを再生していたところ、急にテープが取り出せなくなったとのことです。カバーを開けてテープは取り出したものの、トレイ開閉は不可といった状態です。
最初は正常だっとのことですので、突然のトラブルということです。そこで、機器を送っていただく前に3点ほど質問をさせていただき状態を確認しました。
1 リモコンでの開閉 → 不可
2 故障直前の状況 → 正常
3 カバーを開けたときのベルトの状態 → 見た目は正常
この機種で長期間不使用後の不具合はモードベルトの劣化かグリス固着が原因ですが、突然にというのは珍しい状況です。トレイ開閉部にトラブルでも起きたのでしょうか。早速機器を送っていただきました。
電源をONにすると、モーターの動作音が聞こえますが、数秒で停止し「CAUTION」表示が点灯します。もちろんトレイは動きません。
メカを覗き込むと、可動式テープガイドが途中で停止しています。ということは、グリス固着&モードベルトスリップが原因です。突然この状態で停止してしまうとは珍しい事例です。
メカを分解整備するため、本体から取り出します。標準のスポンジ製ヘッドクリーナーは取れて無くなってますが、スポンジの劣化によりヘッド表面を侵すため無い方がマシなので、これで良しです。念のため、ヘッドの状態を点検します。汚れの付着や腐食はありません。
メカの整備を行うためには底部の基板を取り外す必要があります。その後、リールメカ、キャプスタンモーター、樹脂製ギヤ、リングギヤの順に分解していきます。
モードベルトは硬化が進みスリップしていますので代替品に交換します。リングギヤのスライド部がグリス固着により動きません。
加熱しながら固着部のグリスを溶かし、CRCで除去します。その後再グリスを施します。
元通りに組み立てていきます。
リールメカのブレーキパッドの点検を行います。パッドの状態もブレーキの効き具合も良好です。
ピンチローラーの留め具が割れていないかチェックし、専用クリーナーで清掃します。結構汚れていました。
これでメカの整備は完了です。本体に配線し試運転を行います。動作良好ですが、再生ボタンを押すと時折早送りになります。操作スイッチの接触不良が原因です。
続いてRFアンプの劣化コンデンサー交換です。77ESは4ヘッドのため、RFアンプが2個あります。
最初は再生専用のRFアンプです。やはりコンデンサーの端子部分に液漏れによる腐食が見られます。
劣化部品を撤去後アルコールで汚れをふき取り、新しいパーツを取り付けます。
次は録音・再生用のRFアンプです。こちらも端子部が腐食しています。
交換しました。次はディスプレイボードの修理です。
再生スイッチ以外もすべて抵抗値を測定しました。
この電解コンデンサーの周辺のスイッチが接触不良を起こしています。漏れた電解液がスイッチ内に浸透したのが原因と思われます。うちひとつは完全に絶縁していました。
コンデンサー以外に計4個のスイッチ交換が必要です。
ディスプレイボードは修理完了です。
それともうひとつ、リモコン受光部にも劣化コンデンサーが1個ありますので交換します。
最後にテープパスの点検を終え、録再点検し終了です。このデッキは存在感がありますね、私の好きな一台です。