Audiolife - Enjoy your audio life!!

オーディオライフ:カセットデッキ、DATの販売・修理を行っています。故障でお困りの方はご連絡ください。

ワンポイントメモ

グリップとスリップ

投稿日:2018年6月16日 更新日:

カセットデッキにおいて、テープを巻き取るリールを回転させるメカニズムは、SONYのTC-K555ESLなどに多く採用されているギヤ式のアイドラーと、

A&DのGX-Z9000、9100に採用されているゴム式アイドラーの大きく分けて2種類があります。

ここではその優劣については語りませんが、ゴムを使用しているメカは、「摩擦力(グリップ力)」でリールを回転させています。

これは、先ほどの右の写真のメカでアイドラーを外したところですが、中心の金色のパーツは、リールモーターの軸部です。ここにアイドラーゴムが接触して左右リールに動力を伝達します。

では、再生時にはそれぞれどのような状態でしょうか?

右側のリールは、キャプスタンで送られたテープを巻き取る役目を担っていますが、一定のトルクで巻き取らないと、テープ速度に微妙な影響を及ぼします。したがって、「リールモーターの軸とアイドラーゴム」「アイドラーゴムとリール」は常にグリップ(ノンスリップ)する必要があります。なぜなら、スリップすると、トルクが変動しリールの回転が乱れるからです。ですから、それぞれの接触面はグリップ力が保たれる状態、摩擦係数が高ければ高いほど良いといえます。

次に左側のリールです。

リールの左側に写っている白いパーツはブレーキです。再生時にフェルト製のブレーキパッドがリールに接触し、テープ走行が安定するように常に摩擦力でリールにブレーキを掛け、キャプスタンで送られるテープを引っ張っています。つまり、ここは常にスリップ(セミグリップ)状態にあります。

ブレーキパッドが当たるリール面は、滑らかになっていますので、摩擦力の変動が極めて小さく、ブレーキはほぼ一定の効きとなっています。この当たり面が滑らかでなければリールに加わる摩擦力が常に変動し、テープ走行が不安定になります。

以前、こういった事例がありました。メカを分解すると、このリールの当たり面が、紙やすりのようなもので荒らされザラザラとしていました。おそらく、アイドラーゴムの劣化でリールのスリップが起きたものの、替えのゴムが無かったので、リール側の表面を荒らして摩擦力を高めようとしたのでしょう。

右側のリールは常にグリップ状態ですからこれでも問題は無いのですが、左側は、巻き戻し時は「アイドラーゴムのグリップ」、そして再生時は「ブレーキのスリップ」の状態が求められますので、一律にリールの当たり面を荒らした結果、テープ走行が不安定となって音揺れが酷い状態となっていました。なぜかというと、ブレーキパッドとその荒らされた面との摩擦力が不安定になり、ブレーキの効きが強くなったり弱くなったりし、テープ走行に悪影響を及ぼしたものと思われます。

カセットデッキのアイドラー周辺は、「グリップ」と「スリップ」をうまく利用して駆動するようになっていますので、潤滑剤を吹き付けるなど、そのバランスを崩すようなことは決してしてはいけません。

 

 

-ワンポイントメモ
-,

執筆者:

関連記事

SONY TC-K〇〇〇ESLの誤作動

SONYのカセットデッキのうち、ESLシリーズの故障で「操作不能」というのがあります。 ひとつはアシストモーターのゴムベルトの劣化による操作不良で、これは、ESLに限らず同じメカを採用している前後モデ …

AKAI(A&D)GX機の使用上の注意

カセットテープを再生(録音)する場合、テープとヘッドの位置関係が常に一定である必要があります。 カセットがぐらつくなど不安定な状態では、再生するたびに微妙に位置がずれてしまいます。そうなると、音質や音 …

120分テープ

皆さんは120分以上の長尺カセットテープをお使いになることはありますか? 先日、SONYのTC-K555ESRの取説ページをめくったときのことです。 中に1枚の紙きれが挟まっていました。 「120分テ …

音の揺れ

今日のワンポイントメモは、AKAI、A&Dの特にGX-93、GX-Z9000、GX-Z9100シリーズ(姉妹機も含む)における再生時の音の揺れについてです。 デジタル機器と異なり、超アナログな …

CDダイレクト入力

CDデッキが製造開始された以降、カセットデッキには、「CDダイレクト入力」が装備されたものが多く発売されました。 なぜ通常のLINE入力と分けているのでしょうか?理由はGX-Z7100の取説から引用し …

検索

2018年6月
« 5月   7月 »
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

2024/04/26

A&D GX-Z9100

2024/04/26

SONY TC-K555ESA

2024/04/25

SONY TC-KA3ES

2024/04/25

TRIO KX-880SR

2024/04/24

SONY DTC-59ES

住所
066-0038
北海道千歳市信濃3丁目11-1-1
Audiolife 代表:小西隆幸
050-3717-0768(留守電専用です。トラブル防止のため、当店へのご連絡は記録が残るEメールをご利用ください)
E-mail:audiolife2017@gmail.com

営業時間
月〜金: 9:00 AM – 5:00 PM
土: 9:00 AM – 12:00 PM