今日はDTC-57ESの修理です。ピンチローラーのクリーニング後に不調となったということです。一体何が起きたのでしょうか?
早速機器をお送りいただきました。確かにテープが走行しません。モーターの故障でしょうか。
早速カバーを開けて、ぐるっと中を見渡します。
電源部の電解コンデンサーですが、根元が汚れています。57ESでこのニチコン製の黒い電解コンデンサーはほぼ100%液漏れが起きます。後継機種の59ESでも一部に発生します。表示パネルが点灯しないという故障は、これが原因であることがほとんどです。
電源基板を取り出して点検します。幸いにもプリント面のダメージはありません。酷い場合は腐食して絶縁したり、周辺のパーツが故障します。
取り外すと茶色い電解液が漏れ出しているのがわかります。液漏れしてから間もないようで、最小限のダメージで済みました。
続いてメカの修理に移ります。
大事な部品がありません。どこに行ったのでしょうか?
デッキ内部に落ちていました。ピンチローラーが脱落していました。故障の原因はこれです。留め具が割れて外れやすくなっている状態でクリーニングを行って取れてしまったようです。抜け止めとして少量の接着剤を塗布し元に戻します。
これで正常に再生はできるようになりましたが、57ESには既知のウイークポイントが数点あり、対策を行わないと近いうちに必ず故障が発生します。そこで、オーナー様にその旨を伝えると、メンテナンスを行うことに快諾をいただきましたので作業を進めます。
まずはヘッド周りからです。標準のスポンジ製ヘッドクリーナーは劣化によりヘッドを痛めますので撤去します。
スポンジが変質しています。
ヘッドの状態はどうでしょうか?写真のように影響のない箇所にカスがこびりついていましたが、肝心の回転部分には付着していませんでした。一応清掃します。
次は、ヘッドからの信号を処理する「RFアンプ」です。
これまで交換された形跡は無く、電解コンデンサーの端子が液漏れにより変色しています。
電解コンデンサーを撤去しました。基盤がかなり汚れています。最悪の場合、断線が発生し、修理不可となることもあります。
すべて交換しました。
メカの整備に移ります。底面の基板を取り外し、リールユニットを取り出します。
テープガイドを駆動するギヤの留め具も劣化により脱落し故障の原因となりますので抜け止め処置を施します。
リールメカも摩擦を低減するために可動部のグリスアップを行います。
57ESはリールモーターも次第にトルクの低下が起こりますので同等品の新品と交換します。
これでひととおりのメンテナンスが完了しましたので、試運転です。録音・再生、テープ走行等すべて良好で修理完了と思いきや、Lchの音が出ていないことに気が付きました。
ここのプラグを触ると、音が出たり出なかったりします。基板の半田クラックが起きているようです。
コネクタをすべて外してメイン基板を取り出します。
やはりクラックが発生しています。力が加わる箇所にしては、半田の量が少ないですね。端子すべてに再半田します。
完了です。DTC-57ESは多くのウイークポイントを抱えていますが、適切に処置することにより良好に動作します。同型機をお持ちの方は当店にご相談ください。