隣町の恵庭市在住の方からGX-Z9000の修理依頼をいただきました。千歳市内でお仕事をされているとのことで、帰宅途中にご持参いただきました。分かりづらい場所にも関わらずお越しいただきありがとうございます。
まずは動作確認です。トレイ開閉は可能ですが、メカ固着のためかその後はモーターの唸る音が聞こえるのみで動作不可です。
テープセレクタも「NORMAL」と「METAL」が同時に点灯しチラチラしています。スイッチの接点が接触不良を起こしています。
早速修理に取り掛かります。保管状態が良かったのでしょう、内外装ともに良好です。
フロントパネル、コントロール基板を取り外し、メカを取り出します。
A&D（AKAI)のデッキはスーパーGXヘッドを採用しているため、他社製のようなヘッド摩耗の心配はありません。
まずはトレイのメンテナンスを行います。両サイドに装備されているプラスチック製のスプリングを整形します。
加熱しながら整形します。
カセットハーフを押さえる力が回復しテープ走行の安定化が図られます。
メカ本体に移ります。バックパネルを外して不具合箇所の確認を行います。左側のピンチローラーアームが固着しています。これが今回の故障の一番の原因です。
このピンチローラーアームは、テープガイドとセットになっていて、高さ調整が可能となっています。したがって、分解した後はテープパス調整が必須となります。そのときに備えて高さを測定しておきます。25.6ｍｍです。
ピンチローラーアームを外したところです。古いグリスは除去します。
ヘッドブロックや右側ピンチローラーアームも外し、可動部にグリスアップを施します。
ピンチローラーはまだまだ使用可能ですが、表面が劣化していますので軽く研磨し専用クリーナーで清掃します。
続いてリールメカです。アイドラー周りはグリップ力が高まるようにクリーニングまたは研磨、ブレーキパッドは適度なスリップが保たれるようメンテナンスを行います。
ブレーキパッドは表面が劣化し摩擦力が強まっています。これではバックテンションが強すぎて音揺れの原因となりますので、交換します。不織布製の代替品を用います。
弾力性のある接着剤で貼り付けます。
アイドラーゴムは硬化が進行し割れてしまいました。新品の代替品と交換です。
メカ背面です。基盤を取り外しキャプスタンとカムモーターのメンテナンスを行います。
キャプスタンのフライホイール、カムモーターの順に外していきます。
ゴムベルトの当たり面にゴムカスが付着していますので除去します。ベルトも弾力はありますが、新品に交換します。
テープセレクタの検知スイッチです。接点が酸化し黒くなっていますので清掃します。
元通りに組み付けて、仮配線で動作確認を行います。
正常に動作しますので、ミラーカセットを使用してテープパスの点検を行います。事前に測定したとおりに組みましたので調整は不要でした。
テープ走行は正常が確認できましたので、録再調整に移ります。
テストテープでテープ速度の点検、ヘッドアジマス調整を行います。
dbxがONのときのバランスも調整します。
非常に状態の良い機体で素晴らしいアカイサウンドを奏でています。
