3週間ほど前に修理を終えたDTC-1000ESですが、再度修理前と同じ症状が発生したとのご連絡をいただきました。
症状は「テープがイジェクトできない」とのことですが、前回修理では、私が受け取ったときには正常に動作し不具合が再現できなかったので、その時点で原因として考えられるテープの検出スイッチとローディングベルトのメンテナンスを行いオーナー様にデッキをお返ししました。
今回は、修理後1か月以内に発生した同一の不具合ですから送料も含め無償修理です。ほどなくしてテープが閉じ込められた状態で機器が到着しました。
電源を投入し、イジェクトボタンを押すと、一瞬モーターが動く音が聞こえ、その後は写真のとおりCAUTION状態となります。何度繰り返しても同じです。テープは正常にローディングされていながらトレイがまったく動作しないという症状は初めての経験です。そこで、カバーを開け、トレイメカを取り外して閉じ込められたテープを救出したあと、
メカを駆動するモーターのプーリーを指で回してみました。すると、突然メカが動き出しました。
その後は何もなかったように正常に動作するようになりましたが、これで修理完了というわけにはいきません。故障箇所を見つけて処置を行わなければ再度同様の不具合が発生するのは間違いありません。
「常時発生しない不具合は接触不良が原因」が基本です。プーリーを回転させて影響する箇所と言えば、ロータリーエンコーダーです。
ロータリーエンコーダーに接続されているコネクタの配線を1本引き抜いて見ました。
見事的中しました。受け取ったときと全く同じ状態が再現しました。
早速エンコーダーを分解し、接点の清掃を行い、接点用のグリスを塗布しました。
修理完了です。修理の中でもっとも厄介なのは、不具合がなかなか再現しない故障です。なぜなら、「どの箇所に不具合が発生しているか」、「修理が完了したのか」、という見極めが困難だからです。今回は機器を受け取ったときに不具合状態を目と耳で確認できましたが、前回のように正常な状態であったならば修理はうまくできなかったかもしれません。1000ESも製造から30年以上が経過し、いままで発生しなかったような故障がますます見られるようになるでしょう。
本ブログがなんらかの形でDAT愛好家の方のお役に立てれば幸いです。