このところD-07Aの修理が続いています。今月に入って3台目になりますが、発売からもうすぐ四半世紀を迎えようとしていますので、そろそろ経年劣化による不具合が多発する時期にはいったのでしょうか。
不具合の症状ですが、「トレイが開きにくくなっている」「テープをいれてもローディングされずエラーになる」というものです。
先の震災前に修理依頼をいただきましたが、オーナー様にこちらの状況をご配慮をいただき、昨日の到着となりました。
確かにトレーの開閉が不調です。手で蓋を開けやるとトレーがでてきましたので、テープを挿入してみます。
テープは吸い込まれましたが、その後はうんともすんとも言いません。この状態でまず最初に疑われるのは、テープ検出スイッチです。
カバーを開けてメカの点検を行います。
まずはトレイ開閉用ベルトの交換です。硬化してスリップしていますので、新品代替品に交換します。これでトレイ開閉の不具合は解消されました。
右の写真の四角い白いパーツがテープ検出スイッチです。「テープが挿入の有無」「誤消去防止状態」を検知しますが、接触不良は見られませんでした。
動きが鈍いとか、モーターが回転しているが動作しないということであれば、グリス硬化やベルト劣化が原因ですが、まったく動作しないというのはなぜでしょう?もしかすると基板の故障でしょうか?
そこで、不具合個所の切り分けを行うことにしました。
先日下取りしたジャンクD-07のメカをこのデッキに取り付けてみます。
テープを挿入するとテープガイドが作動しローディングできました。ということは、基板に不具合は無いということになります。
念のため、ジャンク機D-07にD-07Aのメカを組み込んでみましたが、やはり動作しません。メカの故障確定です。さてどこに故障があるのでしょうか?
メカの向かって右横に、黒いギヤが見えますが、このギヤはローディングモーターの動力伝達を担っています。このギヤを指で回転させた途端、ローディングが開始しました。原因はここにあるようです。
それでも再度ローディングを行おうとすると、またうんともすんとも言いません。何やらモーターが怪しいようです。
モーターはメカをひっくり返してこの位置にあります。
モーターを取り出すためにトレイメカを分離します。
ローディングモーターは、常時回転するものではなく、テープの出し入れ時に動作するものですので、デッキの使用時間と比べても使用時間は極めて短いことから、今回の不具合は摩耗が原因ではなく、内部の回転部分の接点の酸化により接触不良が起きたこと原因と思われます。
そこで、モーターをメカから切り離して、モーターの端子に直接電圧を加え単独で10分ほど回転させます。こうして酸化被膜の除去を行います。
モーターのメンテナンスが完了しましたので、続いてほかの箇所の点検も行います。ピンチローラーの状態は良好です。
キャプスタンとリールを連絡するベルトは若干伸びが見られましたので新品代替品に交換しました。
メカの作動状態を検知するローターリーエンコーダーも分解し汚れた接点の清掃を行い、接点用のグリスを塗布します。
最後はヘッドアンプ(パイオニアではRFユニットと呼ばれています。)です。電解コンデンサーの劣化による動作不良予防のため全数交換します。
D-07では100μF×2ですが、D-07Aでは、それに加え、47μF、22μF、4.7μFがそれぞれ1個ずつ追加されています。また、メイン基板に接続するコネクタ形状も異なりますので、D-07とは互換性はありませんが、時間のあるときに流用について研究したいと思います。蛇足ですが、D-07Aは、D-07Aと比べ細部に変更が加えられています。私の知る限りまったく同じに見えるオーディオ基板も互換性がありません。
メカが完成しまた。本体に取り付けるときはいつものように後ろ側を持ち上げながら取り付けないとトレイ蓋が上手く開きませんのでご注意下さい。
トレイ開閉は良好、音出しも成功です。
基板の所定の場所にオシロを接続してRFシグナルの状態を点検します。
各モードでの録音状態を確認し、ヘッドホンVOLのガリ修正を行い、
修理完了です。このデッキにはCDの20KHzを遥かに超える44KHzまで録音できるハイサンプリングモードが搭載されていますので、生録や大切なレコードの録音には大変重宝します。メカもシンプルで故障が少ないので私(D-07ですが・・・)もお気に入りの一台です。