以前カセットデッキの修理依頼をいただいたお客様から、今回はSONYのDATデッキDTC-1000ESの修理依頼がありました。
10年くらい前に入手したものの、ほどなくして動作不良になってしまい現在までそのままの状態で保管されていたということです。
トレイ開閉は可能ということでしたが、到着したときにはピクリとも動きませんでした。
カバーを開けて点検します。トレイが開かないのは、ここのベルトスリップが原因でした。
メカを取り出すためには一旦フロントパネルを外さなければなりません。そうしてトレイメカを分離しましたが・・・???
ロータリーエンコーダーが欠落しています。オーナー様にお聞きしたところ、不調になったときに分解してギヤが欠けていたので取り外してしまったのかもしれないということでした。
理由がわかりひと安心です。ロータリーエンコーダーはギヤが非常に貴重品ですが、スペアパーツの在庫がありますので修理は可能です。
DTC-1000ESや500ESは、メカのコネクタを脱着するために横向きにしたり元に戻したりと大変です。
メカを取り出しました。ピンチローラーはかなり綺麗でしたので、一度は交換されていると思われます。その右に見える可動式のテープガイドの固着はありません。これもメンテナンスされたものと思われます。
メカを裏返して構成しているユニットを分解します。
心臓部のリングギアの状態はというと、グリス硬化による固着が進行していました。CRCで拭き取って再グリスします。
リングギアにモーターの動力を伝達するギヤ類です。ここもグリス硬化により回転がかなり重くなっていましたのでクリーニング&グリスアップを行います。
ヘッドのモーターを駆動するドライブボードは、コンデンサー6ケすべて交換します。
2DDのリールモーターユニットです。固着して回転しません。
ブレーキパッドが貼り付いていましたので分解してパッドを張り替えます。
欠落していたロータリーエンコーダーです。500ES用を流用します。1000ESとの違いはケーブルの色のみです。
すべてのユニットを元通り組み付けます。
続いてトレイメカのメンテナンスを行います。古いグリスでベタベタしていますのでアルコールで清掃し再グリスします。
ここのギヤも固着しかけていましたので分解清掃します。硬化したベルトも交換です。
固まりかけているグリスを除去します。
つづいて、メカを本体に組み込んで、動作テストを行います。
ところがテープをローディングしたと思ったらCAUTION表示が出て停止しました。ヘッドが回転しないのが原因です。
この故障は以前も経験しています。
DTC-1000ESと中身が同一のXD-001でヘッドが回転しないという修理を1年ほど前に行っています。今回も同じ原因でしょうか?
ドライブボードのコネクタです。本来5Vあるべき電圧が半分ほどしかありません。XD-001と同じ故障です。
この中央に見える緑のトランジスタの故障と思われます。
2SB1040という特殊なトランジスタです。念のためトランジスタチェッカーで点検したところ「JUNCTION」と故障である旨の表示がされました。このトランジスタは国内での入手は困難ですが、以前海外から取り寄せたパーツがありますので交換します。
無事ヘッドが回転しました。
ノイズ混じりの再生音でしたので、テープパス調整を行います。
クリアな音になりました。この状態でテープ何本か試聴して修理完了です。
DTC-1000ESは音圧の高いダイナミックな音で私のお気に入りのデッキです。