今回、お客様からDATデッキのヘッドクリーニングに関する質問をいただきましたので、この機会に基本的な方法や私なりの考えをこれまでの知識や経験に基づき述べたいと思います。
1 クリーニングの方法
DATデッキのヘッドクリーニングは「クリーニングテープ」を用いるのが大原則です。ただし、サービスセンター等の専門業者においては、酷い汚れがヘッドチップに付着しクリーニングテープでの処理が困難な場合は、カバーを開けて直接ヘッドチップの汚れを拭き取ります。
個人で直接ヘッドチップを拭き取る場合は、ヘッドチップを破損しないように必ず専門家のアドバイスを受けながら行ってください。なお、直接拭き取る場合は、綿棒のようにヘッドチップに引っ掛かるおそれのあるものは決して使用してはいけません。
2 クリーニングの頻度
クリーニングテープは、ヘッドチップに付着した汚れを「削り取る」ようにできています。従いまして、汚れが付着していない状態で長時間クリーニングテープを走行させることはヘッドの寿命を早めることになります。このことから、クリーニングテープの使用頻度は最小限とするべきです。
DATを業務用に使用する場合は、その用途上の性格から使用の都度にクリーニングを行う必要がありますが、個人で音楽等を楽しむ場合は、クリーニングを行うのはノイズが発生してからでも十分です。
ただし、大事な録音を行う場合は、その前には可能な限り行った方が無難です。
3 クリーニングテープの使用時間
クリーニングテープの説明書きには「10秒間」と記載されていますが、私の経験上、ヘッドの汚れによるトラブルが発生したときに10秒間では不具合は改善されません。説明書きの「10秒間」というのは、ヘッドの汚れがほとんど無い状態での使用時間とお考え下さい。
ヘッドに汚れが付着してノイズが酷い場合、あるいは無音状態になってしまったときは、1分以上クリーニングしなければ改善されないことがあります。長時間にわたる使用は前述のとおり可能な限り避けたいところですが、この場合においては、ヘッドそのものではなく汚れを削っていますので、ヘッド本体への影響は少ないと考えられます。
4 その他
ヘッドの汚れは、状態の良いテープを使用している場合は徐々に進行し、ノイズが混入するようになりますが、長期保管していたなどカビや埃の付着の可能性が高いテープを使用した場合は一瞬にして無音状態となり、その汚れを除去するのも困難となります。デッキを修理または購入されたお客様が機器を受け取り後に遭遇するトラブルで最も多いのは後者のケースで、機器の故障と勘違いすることが少なくありません。
クリーニングテープの販売は数年前に終了しましたので、新品の入手はオークションなどを利用することになります。ただ、クリーニングテープの寿命は相当長いので、中古品でも十分使用に耐え得ると思います。
過去、テープ製造メーカーからそれぞれクリーニングテープが販売されていましたが、この記事の写真に掲載したMAXELL社のものがクリーニング効果が大きいと感じます。ただし、それだけ研磨力が強いということになりますので使用に当たっては注意が必要です。
以上私見を交えての記事となりましたが、異論があるという方はご意見をお寄せください。