SONY最後のフラッグシップモデルTC-KA7ESです。本ブログでは初登場になります。
電源をONにしたり、トレイを閉めたりすると中から変わった異音が聞こえます。テープを入れてもヘッドが上がらず再生不可です。
内部のレイアウトはこれまでのモデルを踏襲していますが、詳細はまったく異なります。
メカを取り出すためには底板を外す必要がありますが、18本！のビスが使用されています。
録音基板が現れました。基板実装型のパーツがふんだんに使用されています。メーカーでは故障時は基板ASSYで交換することを想定していたと思われますが、基板が入手できない現在では故障しても治せません。
メカはこの長四角のプレートに固定されています。プレートを少し緩めると脱着が楽です。
メカを取り出して点検します。予想通り、あるべきベルトがありません。
トレイを取り外し、アイドラーとピンチローラーを外してキャプスタンモーターを切り離します。
キャプスタンモーターを分解しましたが、左側ピンチローラーアームを固定するシャフトが抜け出してしまいました。差し込み部の製造ミス
です。
そのまま差し込んでも抜けてきますので、シャフトにキズを付けてハンマーで打ち込みます。ノギスで位置を確認しながら慎重に行います。
キャプスタンの差し込み部にグリスを微量塗布しベルトを交換し組み立てます。
ESG以降のウィークポイント、電解コンデンサーですが、端子が綺麗ですので液漏れはありません。
予防措置として新品に交換します。
キャプスタンモーターのメンテナンスが完了しました。
次はメカのフロント部分です。モーターブロックを切り離します。
ベルトが溶けてプーリーに貼り付いています。
洗剤と歯ブラシで汚れを落とします。
ベルトを仮掛けします。
メカの動作状態を検知するロータリーエンコーダーです。
接点は一見綺麗に見えますが、アルコールで拭き取ると結構な汚れがありました。スライド接点専用グリスを塗布します。
誤消去防止・テープ種別検知用のスイッチもカバーを脱着して接点を清掃します。
モーターブロックと合体し、ベルトをモーターのプーリーに掛け直します。
オーナー様のリクエストによりピンチローラーを同サイズの新品と交換します。
アイドラーを基に戻し、ヘッドの清掃・消磁を行いました。
メカの整備が終わりましたので本体に戻して動作テストを行います。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態（テープパス）を点検します。
315Hzの信号が録音されたテープを再生します。テープ速度も基準値内に収まっています。
同じテープでリサージュ波形を点検します。ヘッドアジマスはほとんど狂っていないように見えますが、
しかし、12.5kHzの高域帯のテープでは狂いが大きいことが分かります。
画面が横長のため角度が緩く見えますが、限りなく45度になるように調整します。
キャリブレーションを調整し、
入力（左写真）に対する出力のレベルが同じになるようレベル調整します。
CDとアンプを接続し、聴感テストです。期待どおりの音です。
外装を戻して修理完了です。一度は手にしたいデッキの一台であることに間違いはありません。
