これまでCT-A9DやRS-B100などの修理依頼をいただいたお客様から、ジャンク機として購入されたTC-K555ESGのご依頼をいただきました。
電源が入りません。
ヒューズが切れていました。基板にトラブルを抱えてなければ良いのですが・・・
とりあえず切れたヒューズを取り替えてみました。すると、無事ディスプレイが点灯しましたが、カウンター表示に不具合が生じています。通常は3桁表示なのが1桁のみの表示、そして「MEMORY」も点灯しています。おそらくICの故障でしょう。
ICはカウンター基板のFL管の真下に取り付けられています。「MSL9512RS」という型番で、カウンターコントロール用のICですが、ネットで検索すると国内に扱っている会社がありましたので、早速発注を行います。
パーツは入荷まで1週間程度かかりそうなので、メカの整備を先に進めます。
キャプスタンモーターを切り離します。
モーター基板を外します。フライホイールは綺麗な状態です。
ベルトは光沢のある社外品に交換済みでしたが、材質に不安があるため、当店がメーカーに発注し製作したベルトと交換します。
基板上の電解コンデンサーを点検します。端子は汚れていませんので液漏れはないようですが、
予防措置として交換します。
必要な箇所にグリスを塗布し元通りに組み立てます。続いてメカフロント部のメンテナンスを行うのですが、
モーターブロックを切り離すためにはアイドラーの脱着が必要となります。ところが、外れません。ESGでは稀に見かけますが、グリスが固まって固着していました。
ようやくモーターブロックを切り離すことができました。ベルトは劣化していますので交換します。
写真のように仮掛けし、モーターブロックを組み付け後にモータープーリーに掛け直します。
ローターリーエンコーダーを取り外します。
接点の汚れや摩耗が見られますので、誤作動防止として清掃研磨後にスライドスイッチ専用グリスを施します。
セレクターの接点もカバーの脱着を行い清掃します。
ピンチローラーは弾力がありますので、専用クリーナーで清掃し再利用します。
本体にメカを戻して動作テストを行います。OKでしたので、後はICが入荷後に整備します。
1週間後にICが到着しました。
FL管を浮かせて取り付けます。
復活しましたので点検調整に移ります。
555ESGではオーディオ回路に電解コンデンサーの液漏れが多発しますので点検を行います。これは再生基板ですが異常なしです。
底板を外して録音基板を点検します。こちらも異常なしです。555(333)ESGでは経験上、9割方液漏れが起きていますが、稀に問題の無いものがあります。
テープ速度、テープパスの点検を行います。
再生ヘッドのアジマスを点検します。あまり狂っていないように見えますが、実は、波形上では360度、一回り分狂っています。
調整しました。波形の大きさが2倍ほどになりました。つまり高域特性が大幅に改善されたということです。
入出力レベルを調整します。
テープをとっかえひっかえ聴感テストを行います。状態は良好です。
これで修理完了というところで不具合が発見されました。トレイの蓋がグラつきます。どうしてかというと、蓋のツメを引っ掛ける突起部が両側共破損していました。おそらく故障により蓋が開かなくなったので無理にこじ開けて破損したものと思われます。
再度メカを取り出します。フレームが白色のESA用が手元にありましたので交換しました。
完成しました。これで再び最盛期のように活躍できるようになりました。