お客様から機器名指定で購入のご依頼がありましたので、ジャンク品をオークションで入手し整備を行います。
TASCAMの3ヘッドオートリバース機、112RmkⅡです。まったく作動しない状態です。
メカを取り出すためにカバーを開けて、
メカ後部の基板が邪魔になりますので、コネクタで組まれている箇所を分離します。
あとは基板を傾けてやると簡単にメカを取り出すことができます。
メカ背面です。キャプスタンのフライホイールを押さえるバックパネルを取り外します。
ベルトは加水分解によりフニャフニャになっていますので交換します。折長80mmです。この機種は、再生ボタンを押さないとキャプスタンは回転しませんので、回転が安定するまでの立ち上がりが早くなるように5mm程度の太目のベルトが必要です。
このモーターの下に最大のウィークポイントが隠されています。アイボリー色のギヤが欠けています。
さらに中心部に塗布されたグリスが固着しています。取り外し後はバラバラになりました。
海外から取り寄せた対策品のギヤを取り付けます。
メカの動作を検知するローターリーエンコーダーです。接点を清掃し、
スライド接点用の専用グリスを塗布します。
続いてアイドラーゴムを交換するためにリールメカを取り外します。
やはり硬化が進行していましたので新品代替品に交換します。
ゴムの当たる面はアルコール清掃します。
キャプスタンのシャフトにグリスを施して組み付けます。
トレイを分離します。
ヘッドとピンチローラーの状態は良好です。専用クリーナーで清掃します。
左右リールのブレーキも良好です。
メカを組み立てて本体に戻します。
動作良好です。調整に移ります。
ミラーカセットでテープの走行状況を目視点検します。異状ありません。
テープ速度をチェックします。315Hzのテープを再生していますので、3%ほど速くなっています。
左側ラックマウント金具を脱着して調整ネジを回します。
ヘッドアジマスを点検します。狂いが見られますので、
フォワードはヘッドの左側、リバースは右側のネジを回して調整します。
ここからが重要です。315Hz、1000Hz、10000Hzの信号を録音します。
それを録音再生モニターしたものが写真です。レベルも低く、高域も減衰しています。
バイアスとレベル調整を行い、入力と同レベルになるよう合わせます。ノーマル、クロム、メタルそれぞれで行います。
CDを録音しモニターします。音質良好です。
完成しました。このデッキ、音も良いですし、見た目も精悍な3ヘッドオートリバース機ですので、私もお勧めの一台です。