久しぶりにCT-770の修理です。
機器が到着しましたが、リッド(蓋)がグラついています。
ヒンジの部分が破損しています。急いでオーナー様に確認したところ、元々ということでしたので安心しました。これは最後に補修します。
電源が入りません。この機種にはヒューズがありませんので、他の箇所の故障です。
カバーを開けて点検を行います。メカはキャプスタンの駆動方式を除き、上級機と基本的なシステムは同一です。
このメカの右側に電源スイッチが取り付けられています。テスターで導通を確認しましたが、切り替えてもOFFのままです。内部の接点に破損が起きたようです。
スイッチを手持ちのスペアと交換します。このタイプのスイッチはオーディオ機器に多く使用されていて、私のPMA-780Dというアンプもスイッチの故障を経験しています。
電源が復旧しました。
動作確認を行います。電源をONにすると、リールが回転し、キュルキュルと音がします。これは仕様ですので問題はありませんが、ブレーキのゴムが滑っているようですので後ほど交換します。なお、トレイは電動で開きますが閉めるときは手動です。とりあえず大きな問題は無いようです。
メカ背面のコネクタ類を切り離し、メカを取り出します。
モーターが3つ(左からキャプスタンモーター、リールモーター、コントロールモーター)あります。コントロールモーターの下に見えるのはメカの動作状況を検出するポテンショメーターです。
メカを裏返しました。ベルトが2本とも溶けています。
メカ背面の基板を取り外します。キャプスタンモーターを反時計回りに回して取り外さないとネジを回すことができません。
ポテンショメーターも外し、フライホイールのバックプレートがようやく外れました。
キャプスタンのスペーサー紛失に注意します。
こびりついたベルトを洗剤で落とします。
1本目のベルトを掛けます。
2本目は、仮掛けし、モーターを取り付け後にプーリーに掛け直します。
リール周りに移ります。
アイドラーゴムを交換します。
リールのオートストップ用のベルトを交換します。
左右リール下部に装備されているブレーキ用ゴムも硬化によりスリップし嫌な音を発しますので、
シリコンチューブを切断し代用します。
右側ピンチローラーを研磨し専用クリーナーで処理します。
左側も同様です。こちらはテープガイド一体式で調整が必要ですので、元の位置を予め測定し、元通りに取り付けなければなりません。
メカのメンテナンスが完了したので、本体に組み込みます。
このベルトはフロントパネルにテープ走行を表示するインジケーター用です。新品交換します。
テープ走行OK,ところがメーターは振れていますが、片側の音が出ていません。
入出力のピンジャックの裏側です。プラスチックが割れて、金属部分がグラグラしています。
ピンプラグを抜き差しするときに力が加わる部分ですので、接着剤での補修は難しいと思われます。ジャンク機から移植します。
ここで新たな故障が見つかりました。写真中央に並んでいる緑の小さな■6ケはテープ走行を表示するインジケーターですが、点灯していません。
裏側からランプの光を当てる仕組みになっていますが、球が切れています。
電圧はAC10Vです。LEDに抵抗を組み合わせて代用します。
光るようになりました。
調整に移ります。テープパスを目視点検します。
テープ速度です。大幅な狂いがありましたので調整します。
ヘッドアジマスの調整を行います。
入出力のバランス調整を行います。
録音テストを行いましたが、再生だけでは気になりませんが、自己録再では若干ワウフラッターが気になります。ピンチローラーが原因と思われますが、左側は特殊な形状で代替品がありませんので、右側のみ交換します。
錆びたボタンをクリーニングします。
最後はここです。リッドのヒンジを補修します。
左写真は正常、右写真は割れた箇所です。
割れた箇所に小さな穴をドリルで開けて、そこに細い針金を通してパーツを縛ります。これで問題なく使用できます。
完了しました。加工する作業が多く、丸一日掛かりました。