前回のKX-880Gに引き続き、今回は、KENWOODの前身であるTRIO(懐かしいですね)のKX-880SRの修理です。
テープ速度が変化したり、トレイが開かなくなったり、ヘッドが上下したりとメカの動作が不安定だということです。
到着したときは正常に動作しましたが、1時間ほど経つと、ヘッドが勝手に上下して再生できません。
カバーを開けます。メカは前回の880Gと同じSankyo製です。
フロントパネルを取り外し、メカを引き上げようとしましたが、
メカはコネクタ(コントロール2.ヘッド2)のほか、青い2本のケーブルが基板に直接接続されています。切り離すと後で面倒ですので、このまま作業を進めます。
まずは、このメカの最大の弱点である内部の接点の清掃を行います。ホルダーを切り離し、
ヘッドブロックを押さえているプレートを取り外します。そこにあるビスを緩め、
モーターとカム、接点がセットになったユニットを本体から切り離します。
この接点を清掃します。
モーターは前回同様、直接電圧を加え、しばらくの間、空転させます。
仮組みして動作テストです。しかし、まったく改善は見られません。ということは、コントロール回路に問題があるということです。
回路図はありませんが、コントロール回路らしき箇所を目視で点検作業を行います。すると、ICの端子がサビているのが見つかりました。
外してみると端子が錆のため欠落しています。これが原因でしょうか?「6552」というICですが、手元にはパーツがありません。
基板を眺めていると、コントロールとは無関係の回路に同じICが使われていましたので、それを取り外して移植します。
誤作動は無くなりましたので、早速ネット通販で部品を注文します。
週末や連休、コロナによる影響などで、注文から10日以上経ってようやく到着しました。右写真の右下が今回注文したもので、左上が移植したものです。
ICの横にある電解コンデンサーが端子の腐食に関係した疑いがあるので交換します。同容量ですが、技術の進歩により小型化しています。
ついでに同じタイプの電源部の大型コンデンサーも交換しました。
メカの整備に戻ります。ホルダーを取り外し、
ピンチローラーを交換します。
テープ検出スイッチを分解し、接点を清掃します。
メカを本体に戻して調整に移ります。315Hzのテープを再生します。1%強遅くなっていますので、モーターの背面の調整孔にドライバを差し込んで調整します。
ヘッドアジマスに狂いはありませんでした。
録音と再生レベルを調整します。録音バランスに狂いが見られます。
録音バランスは内部の基板上のREC LEVELを回して調整します。
なお、このデッキはバイアス調整ができない仕様になっていますので、使用するテープを選びます。いろいろなテープで録再を試しましたが、音質・音量ともにかなりの差が見られます。最終的にはオーナー様との協議によりTDKのADに合わせることとしました。
完成しました。