本ブログ初登場のXK-S9000です。
中古市場でもかなりの価格で取り引きされているAIWAの名機です。高級感と重厚感を兼ね備えた素晴らしいデザインです。
イジェクトボタンを押すと、内部からモーターの音が聞こえ続けますが、それ以外の反応は一切ありません。
カバーを開けました。
この大きな基板はドルビーSの回路です。
メカの覆いを取り外します。
メカの下部にあるこの黄色いギヤを指で回すとトレイが開きます。
AIWAのデッキは他社にはないこだわりがあります。
再生ヘッドのケーブルが半田付けになっています。メカを取り出すためには一度切り離す必要があります。基板に「シロ」とか「クロ」とか書いてありますので間違う心配はありません。
ただし、不思議なのは、録音・消去ヘッドの接続はコネクタになっています。再生ヘッドケーブルの半田付けは単なる構造上の問題だったのでしょうか?
メカを取り出しました。底部2、上部1本のビスで固定されています。ヘッドのケーブル以外は基板との接続はフラットケーブル1本のみと、メンテナンス上も優れています。
下位機種との違いはここです。この機種は、再生時はリール間にあるアイドラーで駆動されるのではなく、専用のモーターを用いてゴムベルト経由で右側リールを回します。これはモーターのコギング対策ですが、モーターはその構造上、回転角によってトルクが変動しますので、テープテンションを一定に保つため、それを極力減らす工夫です。
なお、ベルトは溶けて無くなっています。
メカの全貌です。
裏返しました。このメカは、トレイ開閉及び、カセットハーフを強い力で固定するAMTS(ANTI MODURATION TAPE STABILIZER)用です。前身モデルでは、ソレノイドの力で「ガチャン」と強烈な音がしますが、この機種ではサイレント仕様としてモーターによるカム駆動となっています。
しかし、ベルトがドロドロに溶けていて、まったく機能していません。
キャプスタンベルトも同様です。
まずはカセットホルダーを切り離します。詳細は以前のS7000の記事をご覧ください。ただし今回は、ホルダーに接続されている細いケーブル(ハウジングランプ、テープ挿入検知)を切り離します。ここも色分け表記がなされています。
ホルダーを取り外しました。
溶けたベルトカスを除去し、新しいベルトを掛けます。
次にAMTSのメカを切り離します。メカ本体と3本のビスで固定されています。
ここはカムの構造が少し複雑ですので、分解前に構造を一旦確認します。
プーリーにベルトが付着しています。
力の掛かる場所ですので、ゴムベルトではなくバンコードに置換します。ベルト長12.1mm・太さ1mmでベストです。緩い・細いベルトではスリップしますし、きつい・太いベルトはモーターに負荷が掛かりすぎてメカがうまく動作しません。
AMTSメカを組み立て後、モーターに直接電圧を加え、カムが正常に作動するか点検します。
フライホイールのバックプレートを取り外します。
フライホイールを脱着し、清掃を行います。組み付け時にはシャフトにグリスを微量施します。
新しいベルトを掛けて組み立てます。径73mmが2本です。
リールモーターに直接電圧を加え、リール回転のトルクが十分かチェックします。
ゴムパーツを専用クリーナーで清掃し、元通りに組み立てます。
テープをセットすると自動でトレイが閉まります。閉まった後にAMTSが作動し、テープを押さえ付けます。個人的な感想ですが、このAMTSのようにテープを確実にセットする機能は、音質上大変有効です。機種によっては、再生中にテープに触れると音質が変化するというものもありますので。
テープ走行、音出しOKです。
点検調整に移ります。キャプスタンベルトを交換したにも関わらず、テープ速度はジャストでした。
ヘッドアジマスは僅かな狂いが見られましたので調整します。
バイアスキャリブレーションを行って、左右同レベルの信号を入力します。それを録音再生モニターし、バランス調整を行います。
CDを録音し聴感テストを行い修理完了です。