PIONEERの高級3ヘッドカセットデッキT-1100Sの修理依頼をいただきました。
テープ走行が開始後すぐ停止する、ということでしたので、アイドラーのスリップが原因と当初は想定していました。
このデッキも例に漏れずベルト劣化による故障が必ず起こります。以前にメーカーで修理されたということですので、その時にベルトは交換されたと思われますが、10年ぶりに動かそうとしたところ、不具合が発生したようです。トレイ開閉はOKですので、モードベルトの状態は問題ないと思われます。
テープをセットして再生や早送りをしてみます。最初はリールが普通に回転しだすのですが、すぐに止まります。
カウンターはまったく動きません。ということはリールの回転を検知できていないということになります。
カバーを開けて、化粧パネル、フロントパネルの順に取り外していきます。
ようやくメカを取り出すことができました。
左側のリールに回転を検知するセンサーが取り付けられています。
センサーを取り外すにはリールの脱着が必要です。
正式名称はフォトインプラプタGP1A51HRです。発光ダイオードと受光部がセットになっていて、リールの羽根がその間を通過するときに信号を発します。おそらくこれが故障していると思われますが、そうでない場合は基板上のICの故障ということになり修理不可です。
部品を発注したところ、アメリカから3日で到着して驚きました。ただし、部品代よりも送料の方が高価です。
交換しました。
念のためベルトの状態を点検します。やはり交換済みです。
元通りに組み立てます。
緊張の一瞬です。カウンターも動作し、勝手に止まることはありません。
調整に移ります。315Hzのテープを再生し速度調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
バイアス調整を行った状態で左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしてバランス調整を行います。
CDを録音し聴感テストを行います。
ヘッドホンVOLにガリが見られますので、機器内部からVOL背面の隙間に接点復活剤を注入します。
完成しました。センサーの故障は100件に1台も無いほど珍しい故障ですが、無事終えることができました。