PIONEERの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、T-1100Sの修理依頼をいただきました。
電源をONにすると「キーン」という金属音が10秒程度発生します。今回は、この修理と、ベルト類交換ということでご依頼をいただきました。
カバーを開けて点検を行います。異音の発生源は、キャプスタンモーターです。
化粧パネル、フロントパネルの順に取り外し、メカを取り出します。
メカ背面です。
まずはモードベルトを交換します。必要以上に分解をすると、ギヤの噛み合わせが狂って調整が大変ですので、最小限、ベルトが交換できる程度まで分解します。
新しいベルトと交換します。
続いてキャプスタンベルトです、モーターごとバックパネルを取り外します。
弾力がかなり弱くなっています。新しいベルトに交換します。
フライホイールを少し引き抜き、キャプスタンのシャフトにグリスを塗布します。
モーターの形式は「SHL2L」です。TEACのV-6030Sと同じモーターです。このモーターは入手困難ですが、「EG-530AD-2B」というモーターが互換モーターとして使用できます。
T-1100Sは金属製のプーリーですので、簡単には抜けません。プーラーを用いて引き抜き、新しいモーターに取り付けます。
何の加工も必要なく、取り付けできます。
ハウジング内の化粧パネルを取り外します。
リール周りを分解するとアイドラーにアクセスすることができます。
ゴムリングを新品交換します。
メカの整備が完了しました。
メカを本体に戻し、フロントパネルを取り付け調整を行います。
315Hzのテープを再生して速度の点検を行います。モーター交換後は必ず調整が必要です。
ヘッドアジマスの調整を行います。
サービスマニュアルに従い、テストモードでAUTOBLEの発信周波数の調整を行います。400Hz、3kHz、15kHzです。
しかし、AUTOBLEが正常に作動しません。自動調整が完了後に録音再生モニターで音質を確認しましたが、バイアスが適正な値に調整されていません。原因を調べたところ、録音ヘッドの劣化が原因のようです。そのため、バイアス調整を行っても左右の周波数特性のバランスが狂って自動調整が上手く作動しません。
テープごとにバランスが狂ったり、AUTOBLEではエラーが出たりとやや不調ですが、何とか基板上のツマミで現状ベストな状態に調整しました。
以上修理完了です。