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KX-1100G

KENWOOD KX-1100G 電源ライン故障

投稿日:

KENWOODの3ヘッドカセットデッキ、KX-1100Gの修理依頼をいただきました。

カセットデッキの故障は、ほとんどがメカの不具合が原因なのですが、今回は違います。

テープは走行しますが、音が出ません。LINE入力にも無反応です。

まったく音が出ないというのは、電源ラインの故障ということが考えられます。

回路図とテスターを用いて、電圧のチェックを行います。1時間以上要しましたが、ようやく異常な箇所を発見しました。録音・再生アンプに電源を供給している-7.6Vのラインが0Vとなっています。回路図のQ30(2SA1127)に故障が起きている可能性があります。また、その隣のC98(470μF)の電解コンデンサーがショートモードで故障していますので、これがそもそもの原因だったようです。

写真中央のトランジスタとその下の電解コンデンサーが故障しています。

部品が届くまでの間、メカの整備を行います。

テープ検出スイッチの接点を磨きます。

バックテンション用ベルトが溶けて切れています。

周辺に付着しているゴムは洗剤で除去します。リール裏側の白黒の模様は回転を検知するためのものですが、アルコールや強力な洗剤を使用すると模様が消えますので注意が必要です。

新しいベルトを取り付けます。

メカのモードを切り替えるスイッチを脱着して接点を磨きます。

表面が劣化しているピンチローラーは、研磨し専用クリーナーで処理します。

メカ背面です。基板を取り外し、

シャフトにグリスを微量塗布し、新しいベルトと交換します。

テープポジション検出スイッチも分解清掃します。

トレイの開閉がロケットオープン状態になっています。このゴムリングの劣化が原因ですが、断面が特殊形状のため残念ながら交換できません。

発注していたパーツが納品となりましたので、基板の修理を行います。しかし、この機種は、基板脱着がかなり複雑です。

基板の脱着方法ですが、ストップボタンの下にマイナスドライバーを差し込んで、ボタンを取り外します。すると、そこに、ディスプレイ基板を固定しているネジの1本が現れます。この方法は、サービスマニュアルを見なければわかりません。

底板とフロントパネル、そしてリヤパネルも切り離し、写真のように基板を取り外します。

ようやく基板の半田面にアクセスすることができました。

取り外したトランジスタをチェッカーで点検すると、やはり「UNKNOWN」と出ました。

トランジスタを新品に交換します。

故障の原因となったと思われる470μFと、その横の+7.6Vラインの回路のコンデンサー470μFも予防措置として一緒に交換します。

元通りに組み立てて動作テストを行おうとしたところでトラブル発生です。ディスプレイのカウンターが「0.40」と点滅し、メカが動作しません。これにはさすがに焦りましたが、半日以上費やしてようやく原因が分りました。

結果としては自分のミスでした。キャリブレーションモードのスイッチがONになっていました。写真のようにOFFの位置にスライドすると再生や早送り等が可能になります。この機種は、キャリブレーションモードONでは早送り巻き戻し再生ができないことは初めて知りました。分解時に誤って触れてしまったようです。

ようやく正常に再生できたと思ったら、再びトラブル発生です。テープ走行がすぐに停止します。動作を目視で点検すると、右側のリールの回転が突然停止しますのでリールモーターの故障と思われます。

テープ2本がダメになりました。この機種は、左右リールの両方が停止しなければ、オートストップが効きません。今回のように、右側のリールが停止しても、キャプスタンの回転によりテープが左リールから右方向に次々に送られ、写真のようになってしまいます。

この機種のリールモーターは、内部接点に接触不良が起きやすいことで知られています。分解修理を行います。

モーター背面のノイズ防止用基板、そしてモーターのバックパネルを取り外します。

ブラシと整流子が酸化して汚れています。

リューターと目の細かいサンドペーパーを用いて接点を慎重に磨きます。最後に接点復活剤を塗布し、ブラシを痛めないように治具を用いてブラシを広げながらバックパネルを組み付けます。

これでようやく正常に戻りましたが、ブラシの当たりが出るまで、長時間モーターを空転させる必要があります。また、リールモーターの不具合による回転停止は、回転が遅くなるテープの後半に発生しますので、動作確認には注意が必要です。

調整に移ります。機器が十分温まった状態で、315Hzのテープを再生して速度の点検を行います。

キャプスタンモーターの基板内の半固定抵抗を回し調整します。

ヘッドアジマスの調整を行います。

左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしバランス調整を行います。

CDを録音再生モニターして聴感による音質の確認を行います。このデッキはバイアス調整が左右チャンネル独立していますので、微妙な調整が可能です。

走行停止が再発しないことを確認するため5日ほど動作確認を行い修理完了です。個人的にこのデッキの音質は好みです。

-KX-1100G
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