これまで何度かお取引いただいているお客様からのご依頼です。
TASCAMの3ヘッドオートリバースカセットデッキ、112RmkⅡです。個人的に好きなデッキの1台です。不具合の状況はというと、ときどきリールが回転しなくなるということです。
カセットハウジング内のランプが切れています。また、再生を開始すると、テープ速度が一定になるまで1秒ほどかかります。キャプスタンベルトのスリップが原因と思われます。
今日は北海道は気温が高く、作業部屋も暖かいためでしょうか。ひととおり動作しました。ゴムパーツは温度の影響を受けますので、それで動作不良が発生したものと思われます。肝心の音質ですが、かなり籠っているといった状況です。
カバーを開けました。
オーディオ基板の上に、もう一枚基板があります。この機種には、この基板があるものと無いものが存在しますが、何か機能をプラスするオプションでしょうか?
メカを降ろしました。
まずはハウジングランプの交換を行います。裏側に貼られている四角形のものがそれです。
右側はA&DのGX機用です。ランプ部は同じものが用いられています。
コネクタの形状は異なりますので、ランプ部のみ移植します。
メカのメンテナンスに移ります。メカ背面のパーツを分解していきます。
ベルトは劣化して表面がスベスベになっています。後ほど交換します。折長120mmです。
カムギヤ・エンコーダーです。
手前のギヤは経年劣化で破損するというこのメカの最大のウイークポイントですが、標準品はベージュ色ですので、これは既に違う材質のものに交換済みです。隣のギヤに破損したときの破片が付着していました。
ギヤ類は脱着して可動部を清掃しグリスアップします。
白色の大きなカムギヤでヘッドの反転を行っています。正確な位置に組み付けなければ上手く作動しません。
この接点でメカをコントロールしています。
接点を清掃し、スライド接点専用のグリスを塗布します。
リールユニットを取り外します。
アイドラーゴムを交換します。
ゴムの当たり面を脱脂します。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、新しいベルトを掛けます。オートリバース機はキャプスタンが常時逆方向に回転するようにベルトを取り付けます。
背面のメンテナンスが完了しました。
カセットホルダーを取り外し、ピンチローラーを交換します。13mm*8mm*2.6mmです。シャフトのサイズが特殊ですので、ドリルで少し穴径を拡張します。
メカを組み立てて本体に戻します。立ち上がりのテープ速度も問題ありません。ハウジングランプも写真のとおりです。
調整に移ります。315Hzの信号が記録されたテープを再生します。ベルト交換の影響もあり、大幅な狂いです。
写真の位置に調整ツマミがあります。ピッチコントロールON-OFFの両方で合わせます。
VOL類のガリは、VOL背面の穴から接点復活剤を注入します。
アジマスの調整を行います。調整前は大幅な狂いが見られました。オートリバースですので、フォワード、
リバースの両方向で調整します。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしてバランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープを用いて録音再生状況を確認します。音質は劇的に改善されました。
以上修理完了です。