先日、当店のブログをご覧になった方からメールをいただきました。「当分の間、使用していなかったカセットデッキを動かしてみたら、動作が不調になっていた。修理するにも費用が掛かるので、引き取って欲しい」といった内容です。機種名をお聞きして、「是非お願いします。」ということでお送りいただきました。
AKAIのGXC-760Dです。1976年頃発売ですからもう半世紀近く前の製品です。当時オーディオに熱を上げていた私の憧れのカセットデッキでしたが、148,000円という価格でしたので、学生の私には手に入れることは夢のまた夢でした。
到着後に動作確認したところ、再生が開始しないことがあるなど、動作が不安定な状態でした。おそらくモーター内部の接点が接触不良状態になっていることが原因ですので、早送り状態で半日程度放置し、接点の自己回復を図りました。
その間、機器の観察を行います。以前、西日本にお住まいの方がお持ちの1975年製のGXC-710Dを取り扱ったときは、「60Hz専用」でしたが、このデッキは「50/60Hz両用」の仕様になっています。この年代辺りが境目なんでしょうか?
カバーを開けます。手に持っている一般的なカセットデッキ用のモーターと比べるとわかると思いますが、かなり巨大なキャプスタンモーターが視界に飛び込んできました。
指差ししているのは、リールモーターです。左右独立したダイレクトドライブという、まさにオープンリールデッキの設計思想に基づいて作られたデッキと言えます。
本格的なメンテナンスは、使用に差し支えるようになってから行うことにして、簡単なメンテナンスだけ行います。気になったのは、ピンチローラーの表面のテカリです。
最初は新品交換しようと思いましたが、軸径が2.5mmでは代替品がありません。2mmのものを穴径を拡大するという手もありますが、硬化はそれほど進行していませんので、とりあえず表面を研磨しS-721Hでクリーニングして再利用します。
消磁を行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
サービスマニュアルに従い調整します。
ヘッドアジマスの調整を行います。
周波数特性をチェックします。まずまずといったところです。
操作ボタンのクリーニングや、スイッチ類への接点復活剤の処置、録再レベル、メーターの調整を行いました。
当分はこのまま使用したいと思います。忘れかけていた約半世紀前の夢が叶いました。