AKAI製カセットデッキの代表作、X-93の修理依頼をいただきました。
破損防止のためサイドウッドを取り外してお送りいただきました。
電源を入れると大きなモーター音が鳴り響き、勝手にトレイが開きます。典型的な故障です。
カバーを開けました。配線の状況から、修理歴は無いように思われます。
メカを取り出して分解を進めます。
カセットホルダーに内蔵されているスプリングが経年により変形していますので、脱着して加熱整形します。
右側のピンチローラーアームが固着してまったく動きません。
製造時に処置されたグリスが固まっています。
固着しているピンチローラーアームは、無理に引き抜かず、CRCを注入、半田ごてで加熱しながら慎重に引き抜きます。
15分程掛かりましたが、無事外すことができました。グリスが乾いて真っ白になっています。
ピンチローラーを同サイズの新品に交換します。
ヘッド周りの可動パーツを分解し、古いグリスを拭き取って、シリコングリスを微量処置し組み立てます。
ヘッドとピンチローラーがスムーズに上けすることを確認します。
リールとアイドラーを取り外します。リールはゴムが当たる面を脱脂します。
アイドラーゴムは硬化して割れています。新品交換します。
メカの背面を分解します。
キャプスタンベルトの当たり面は、汚れでざらついていますので、清掃を行います。
異音を発していたモーターです。
ベルトを交換、
モーターも代替品と交換します。
テープポジション検出スイッチの接点を清掃します。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、新しいベルトを掛けて組み立てます。
メカのメンテナンスが完了しましたので本体に戻して動作テストを行います。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視で点検します。この機体も先日の記事に書いたように、右側のテープガイドがテープと干渉していましたので調整を行いました。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしてバランス調整を行います。
dbxがONの場合も同様にバランスの点検調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状況を確認し、
完成です。