これまで何度もお取引いただいている、ご自分でデッキの修理業を営んでいる方からのご依頼です。
A&Dの限定モデル、GX-Z7100LTDです。外観はGX-Z9100、内部はGX-Z7100という仕様です。
故障の状態ですが、キャリブレーションスイッチをOFFに切り替えてもONの状態のままということで、録再不可です。しかし、時間を置くと、
自然と正常に戻ることがあります。こういった不定期に現れる不具合は、ほぼ100%接触不良が原因ですが、その箇所を特定することは困難な場合がほとんどです。
早速カバーを開けてシスコン基板とメイン基板のプリント部の点検を行いましたが、それらしい半田クラックは見つかりません。そうこうしているうちに、再度故障状態に戻ってしまいました。
しかし、正常な状態では接触不良個所の発見は困難ですので、この不具合が発生している時がチャンスです。各部の電圧を測定するとともに、コネクタやフラットケーブルなど怪しい箇所を揺すったり、基板を軽く押し付けたりして接触不良が解消されるところを探し続けます。ようやく、一か所、本来の電圧が4.5Vのところが0.2V程度になっている箇所を見つけましたが、妙なタイミングで正常な状態に戻ってしまい、その日はどこが不良箇所かはわかりませんでした。
結局、そのまま正常な状態が2・3日続いたため、不具合個所が特定できず半分諦め気分でしたが、
なぜ、一時的に電圧が低くなっていたのか、回路図を見ながら考えてみました。電圧は、キャリブレーションのスイッチに連動して変化するようになっていますので、そのラインが疑われます。
最初はスイッチの故障かと思いましたが、ONOFFを繰り返してもそれらしい気配はありませんでした。
そこで、テスターでプリント基板上のスイッチラインの抵抗値を測定してみると、抵抗値がゼロであるべきのところが20Ωの抵抗値が測定されました。しかし、拡大鏡でプリントパターンや半田付け箇所の点検をしてもそのラインに見た目の異状は見られません。
ちょうどそのとき、偶然、不具合が再現したので、さきほどの20Ωのラインの抵抗値を測定すると、絶縁状態になっていました。見た目では分かりませんでしたが、プリント部に何らかの異常が起きて、首の皮一枚繋がったほぼ断線状態だったようです。
そこにバイパスケーブルを設けて、無事修理完了しました。
接触不良は、わかってしまえば簡単な修理ですが、そこに至るまでの道のりは長く険しいものです。