本日の修理はA&Dの名機、GX-Z9100です。
前モデルのGX-Z9000で定評のメカ、スーパーGXヘッドなどを継承するとともに、デザインや回路は一新し、存在感があり所有欲を満たしてくれるモデルです。また、新たにメーターで目視できるキャリブレーション機能を装備し、テープごとに最適なバイアス調整が可能でその音質は明るく伸びのあるまさにAKAIサウンドです。
今回依頼のあった機体は、前オーナーが修理したものを1年ほど前に購入されたとのことですが、テープ走行が不安定、トレイ開閉の動作音が大きい、ドルビーの液晶表示が不安定といった状態です。それでは修理に移ります。
確かに、トレイ開閉の音が大きいです。モーターの軸受の劣化です。また、モーターの動作タイミングから判断すると、ベルトもへたっていると思われます。
はじめにサイドウッドを取り外すのですが、1か所、黒い樹脂製ワッシャーが破損して紛失しています。よく見る光景です。
上蓋を撤去しました。修理履歴はあるとのことですが、ケーブル類はきちんとまとめられています。
このモーターが劣化して大きな音がします。また、ここのベルトも劣化しています。
メカを正面から取り外すためにフロントパネルを外しました。
ヘッドのケーブルコネクタを外すために底板を取り外します。豪華な銅メッキ仕様です。右の写真は底板を外したところです。
デッキメカを固定している上下4本のネジとヘッドのケーブルを外してメカを取り出しました。
トレイ類を外します。トレイのカセットダンパーのへたりやピンチローラーの固着はありませんでした。
GXヘッドです。さすが摩耗はまったくありません。ここで心配していたことが見つかりました。よく見てください。ヘッドと右側の黒いピンチローラーの間に灰色のテープガイドが見えますが、奥側の爪が折れています。GX-Z系のデッキは、ピンチローラーのグリスが固着して、ヘッドが下がらなくなります。その状態で無理にテープを取り出そうとするとここが折れてしまいます。このままでも大きな問題は起きませんが、新品はありませんので、貴重なパーツのため費用がかかります。ここはオーナー様と相談です。
これもお約束です。左側リールのブレーキパッドが取れそうになっています。右の写真は修復後です。強力な接着剤で貼り付けます。
ここも大変重要です。テープ走行の一旦を担っているアイドラーですが、硬化してカチカチのツルツルです。走行不良はこれが原因でしょう。純正品ではありませんが、代用品がありますので、新品に交換です。
左側のピンチローラーです。左が修理前、右が修理後です。中央部に見える細いバネが正規な位置とは異なっていたので元通りにします。ここでいったん作業は中断です。
しばらくしてオーナー様から修理続行の快諾をいただきましたので続けます。
まずはテープガイドの交換です。ネジロック剤で固定されており、無理にナットを回すと軸が破損しますので慎重に取り外します。
色は違いますが、左が破損したもので右が交換用です。
交換して同じようにネジロック剤を塗布します。
続けてメカの背面部に移ります。
右の写真は基盤を取り外したところです。
ダブルキャプスタンです。ここのベルトは耐久性が高いのですが、汚れがありますので、新品に交換します。当店では国内の工場に特注した良質のベルトを使用しています。ベルトの当たるフライホイール部もゴムカスが付着していますので清掃します。
続いて問題のモードベルト(トレイ開閉他用)とそのモーターです。
元々付いていたのは、右側のベルトですが、なぜかかなり細いものが付いていました。そのためスリップが起きてトレイの動作が不安定になっていました。
ここも良質の新品に交換です。モーターも軸受が劣化し動作音が酷い状況でしたので、中古ですが交換します。
続いてこの部分、テープセレクターです。液晶のテープ種別(METAL,CROM、NORMAL)の表示がちらつくのはここの接点の汚れが原因です。
右が清掃後です。接点が光っています。
ここでちょっと宣伝です。ヘッドとピンチローラーは、プロ用の専用クリーナー「アメリカンレコーダーテクノロジーズ社のS-721H」を使用します。当店の販売サイトで扱っています。特にテカリが出やすいピンチローラーのクリーニングに効果があります。
ヘッドの消磁も行い、
元通りに組み立て、本体に仮組みします。トレイ開閉の音は非常に静かになりました。
オーナー様がご指摘の通り、ドルビーの表示に不具合があります。ちらついたりBとCが同時に点いたりします。スイッチの接点をメンテナンスし改善されました。
テープ速度のチェックです。クオーツロックで自動調整です。0.1%以内の誤差で問題ありません。
アジマスのチェックです。良好です。若干出力が小さかったので調整を行いました。
録音も良好です。念のため、テープ1本を通しで行いましたが問題はありません。
配線を束ね、筐体を元通りにして修理完了です。すばらしいAKAIサウンドを奏でています。今日一日試運転してオーナー様にお送りします。
以上、メカOHと総合調整で13,000円、テープガイドやモーター交換など追加の修理が4,000円の合計17,000円です。
GX系のデッキが不調の方は是非ご相談ください。