今日の修理はSONY社製のカセットデッキ、TC-K222ESLです。
この機種は1990年に発売され、3ヘッド、クオーツロックのダブルキャプスタン、バイアスキャリブレーション機能を搭載しながら当時59,800円という超破格な定価でした。私も発売当時に購入し使用していましたが、その高音質に驚いた記憶があります。
さて、この機体の状態ですが、電源を入れると「表示が勝手に切り替わる」「操作不能」といった状態です。まずはメカのメンテナンスを行います。
蓋を開けました。高級機と比べると隙間が多いようですが、フレーム補強され堅牢な感じがします。
メカを取り出しました。上級機と共通の定評あるメカニズムです。
トレイを外すため、このスプリングとトレイの支点部を分解します。
ダブルキャプスタンと3ヘッドが見えました。さらにビス2本で固定されている正面パネルを外します。
キャプスタンモーターのブロックを分離するため、ピンチローラーと左右リール間にあるギアを外します。
左側のピンチローラーを外すと後でテープパスの調整が必要になりますのでご注意ください。
正面のビス4本を外し、キャプスタンモーターを分離しました。
DDモーターの基盤を外したところです。
この辺りのSONYのデッキはこのコンデンサー(2個)に欠陥があります。写真を見てのとおり、液漏れで根元の部分が腐食しています。
このブログを参考に修理されている方もいらっしゃるとのことですので、この腐食したコンデンサーの撤去方法です。普通に半田を溶かして外そうとしてもなかなか取れないどころか、基盤に大きなダメージを受けることがありますのでご注意ください。
右の写真に写っているような精密ニッパーを使います。左側の写真のように最初に縦に切ります。そして右の写真のように上部を切断します。
残った部分もニッパーで慎重に切断撤去し、端子のみが残ります。この状態で初めて半田ゴテを使い除去します。最後にアルコールと綿棒で清掃します。
キャプスタン軸をグリスアップしもとに戻します。ベルトは柔軟性があり綺麗でしたので再利用します。
次はリールモーター、アシストモーターをベースごと外します。ここも組み立てが難しいところです。分解する際はご注意ください。
このメカは大変優れているのですが、
ヘッドを上げ下げしたりするアシストモーターのベルトですが、加水分解によりヘナヘナになります。交換は必須、というより、この機体では使用不能となっていました。これが進行すると溶けてプーリーにへばりつき、除去するのに大変苦労します。TEACのデッキ、R9000辺りのキャプスタンベルトも同じく溶けますね。
このベルトは組み立てるのにコツがいります。まずは写真のように掛けておいて、メカを組み立て後、モータープーリーに掛けてやります。メカはその後、ヘッドやピンチローラーをいつものように専用クリーナー(アメリカンレコーダーテクノロジーズ S-721H:販売サイトで購入できます。)で清掃し元通りに組み立てます。
続いて「操作不能」の修理です。フロントパネルを取り外します。これは液晶部の基盤です。
このパーツは「リモコン受光部」です。ESLシリーズの弱点です。ここの電解コンデンサーの劣化により、リモコンを滅茶苦茶に操作している状態になり、「動作不能」あるいは「誤動作」が起こります。電解コンデンサー超小型のものが3つついていますが、同じサイズでなければこの中に取り付けることができないので、ユニットごと交換です。
ヘッドやテープガイドの調整、音量調整などを行い整備が完了しました。