本日はA&D社製の3ヘッドカセットデッキ、GX-Z7100EVです。
このデッキは、A&DのGXシリーズの最終形となりますが、信頼のあるデッキメカやGXヘッドにこれまで培ってきた技術をさらに投入して改良を加えるとともに、回路もリニューアルするなど機能音質を徹底的に追求したモデルとなっています。
機器が到着しました。早速状態を確認します。
まず、トレイが閉まり切りません。これは前回の記事に記載したことが原因でしょう。
手でフォローしカセットテープを挿入しPLAYボタンを押しても走行しません。右側リールのトルクがかなり弱くなっています。
メカを取り出すため、カバーと前面パネルを外していきます。底板も外し、ヘッドのケーブルコネクタを外します。これまでのモデルと似ていますが、細部に改良が加えられています。メイン基板はこれまでとまったく異なっています。
メカの損傷やグリスの固着は見られませんがグリスアップを行います。
ピンチローラーをアームごと外し、可動部にグリスを塗布します。
ピンチローラーはテカりが出ていますので、表面を軽く研磨し、専用クリーナーで清掃します。テカりが無くなりました。
アイドラーゴムです。状態はそれほど悪くはありませんが、新品に交換です。
元通りに組み立て、清掃&消磁を行い背面に移ります。
左下に見えるカムモーターが改良されています。これまでのモデルは、軸受の劣化が早く、異音が発生するため改善されたのでしょう。
ベルトを交換し、当たり面を清掃し軸受部にグリスを塗布します。
カムモーターのベルト(左が新品)ですが、ここは消耗品ですので、5~10年に1度は交換が必要となります。
テープセレクターの接点を清掃します。
元通りに組み立てて、試運転です。トレイ開閉やテープ走行は正常になりました。
ところが、ここで別な箇所の故障が判明しました。再生音が著しく不良です。アジマスが大幅に狂っているようなこもった音質です。点検したところアジマスは正常でしたし、録音も正常にできます。
両CH同時に不具合が発生するということは、電源の可能性も考えましたが、テスターを当てると正規の電圧が印加されています。再生ヘッドの故障でしょうか?
これを修理するためには、当初の予定よりも費用が掛かりますので、オーナー様と相談したところ、OKがでましたので、時間が掛かりますが修理を続行です。
結果は後ほど記事にします。
2017/6/11更新
ヘッドの導通を点検しましたが、特に異常はありませんでしたので、どうやら基盤側の問題のようです。
回路図を見ましたが、電圧は印加されていますので、左右チャンネル同時に不具合が出るということは共通部品のICの不具合でしょうか?
知り合いに部品の手配をお願いしていましたが、昨日ようやく入手しました。
運よく基盤ごと確保することができましたので、これを移植します。
大掛かりな修理にはなりますが、いたずらに不具合個所を探すよりも費用的には安価になります。
移植完了です。無事不具合は解消され、残るは調整のみです。
まずはテープ速度です。基準テープで315Hzに調整します。
アジマス、左右出力を調整します。ここで、一度録音テストを行うのですが、録音自体は正常にできますが、バイアスキャリブレーションの効きが悪い状態です。アジマスはOKですが、ヘッドの傾斜などそれ以外の調整も必要です。
キャリブレーションもOKになりました。テープを数種類を変えて確認します。
録音バランス、音量の調整を行います。
最後にケーブル類を束ね修理完了です。
明るくメリハリのあるAKAIサウンドです。今回は、想定外の故障があったため、修理費用が当初見積もりよりも1万円ほど掛かりましたが、メカOH,基盤交換、総合調整を行いましたので、当分の間は良好な状態を保つことができると思います。
修理費用は合計25,000円となりました。