DTC-690の修理を行ったときのことです。
メカの分解整備を終え、試運転を行ったところ音が出ないのでクリーニングテープをローディングしようとしました。
DATデッキは、カセットがセットされると、可動式のテープガイドがテープを回転ヘッドまで引き出し、スタンバイ状態になります。
ところが、テープは引き出されるのですが、テープガイドが最後の位置に到達せずにCAUTION状態になります。何回やっても同じです。
そこで、再度普通のテープをセットすると、今度は正常にローディングされます。次に、違うクリーニングテープをセットしましたが再びCAUTIONになります。何故クリーニングテープにのみ不具合が発生するのでしょうか?
メカの様子を観察しました。まずは普通のテープです。カセットがセットされると、ヘッドが回転し、テープが引き出されます。ヘッドは慣性で回り続けていますが、テープが完全にローディングされた後に回転が停止します。そして再生や早送り巻き戻しボタンを押すと再度ヘッドが回転しテープ走行が始まります。
次はクリーニングテープです。カセットがセットされるとヘッドが回転し始めますが、テープがヘッドに接触したとたんヘッドにブレーキがかかったように回転が停止します。そうすると、テープガイドも停止し完全にローディングされないままの状態になり、その後、テープガイドは一旦元の位置に戻り再ローディングを試みますが、最終的にはCAUTIONになります。
テープがヘッドに接触したとたんに回転が停止するということは、ヘッドの表面に何か異常があるのではないかと思い、拡大鏡でじっくりと観察しました。
原因がわかりました。ヘッドの表面に黒い点々がいくつも付着しています。何故このような汚れがついたのかはわかりませんが、ヘッドチップを損傷しないようにアルコールと綿棒で慎重に除去したところ不具合は解消されました。
(写真は別のヘッドです)今回の不具合がクリーニングテープにのみ発生した理由ですが、クリーニングテープは目の細かいヤスリのようなもので、普通のテープとは異なり摩擦係数が高いという性質をもっています。そのためヘッド表面の異物に引っかかりブレーキとなったと思われます。ヘッドが急停止したため、異状を検知しローディングも停止したのでしょう。
今回はDTC-690での不具合でしたが、この現象は同様のメカを持つ機種にも発生すると思われます。万一同様の不具合が発生した場合、安易に直接ヘッドを清掃することは致命的なダメージにつながりますのでご注意ください。