お客様から買取依頼がありました。そのうちの1台、SONYのカセットデッキ、TC-K333ESGです。
1989年に発売され、当時の価格は79,800円で555ESGと222ESGに挟まれた3姉妹の真ん中、ハイグレード機です。
買い取る前のお話では「途中で停止する」とのことでしたので、リール部の回転センサーの故障と考えていました。早速動作確認を行います。
テープを挿入しないで再生するとメーターが振り切ってしまいます。なぜでしょう?
わかりました。オーディオ基盤のアースを兼ねているビスが浮いています。以前修理したときに締め忘れたのでしょうか?
テープを挿入して動作確認したところ、テープ走行しますが、音がうねっています。そしてテープから異音がします。
やられました。テープに折り目がついています。テープパスの狂いでテープが進行方向と垂直方向に振れているようです。左側のピンチローラーの高さ調整を行っても一向に改善されません。ということは、原因はアレしかありません。
予想は的中しました。左側リールのブレーキパッドが脱落しています。右は修正後です。このブレーキパッドは、左側のリール回転に抵抗を加えてテープテンションを発生させ、テープ走行を安定させる役割を担っています。
折角メカを取り出したので、メンテナンスも行います。
まずはピンチローラーです。弾力性はありますが表面は劣化しています。軽く研磨し専用クリーナーで清掃します。
効果は抜群です。国内では入手困難な業務用のクリーナー、「アメリカンレコーダーテクノロジー社のS-721H」です。カセットデッキなどゴム製品を扱ってる機器をお持ちの方に超おすすめ商品です。現在在庫僅少ですが当店の販売サイトで購入できますので、お早めにお買い求めください。
キャプスタンのブロックを切り離します。
ベルトは標準品ではありませんでしたが、比較的最近に取り換えられたものと思われます。
10μFの電解コンデンサーの端子部が変色しています。ESGシリーズ以降のウィークポイントですので交換が必要です。
続いてリールメカです。ここのベルトも新しいものが付いていましたが、なぜかテカっていましたので、プーリーを清掃し新しいベルトに交換しました。
サービスマニュアルによると、ここのベルトはこのように仮組し、メカを組み立てた後にモーターのプーリーに掛けなおすとのことです。
この状態でテープパスやアジマスなどを調整します。
青いツマミが出力レベル、穴が開いているところにRECレベルのツマミがあります。基準テープ等でバランス調整します。
以上修理完了しました。原音に忠実な落ち着いた音質です。このデッキは当店のHPで販売しますので興味のある方は是非ご覧ください。