今日はA&DのGX-Z9000の修理依頼をいただきました。
左側ピンチローラーアームの固着、そして、右側キャプスタンにテープが絡まり取り出せない状況です。電源をONにすると、トレイが開こうとしますが、テープが引っかかって「ギー」と唸るだけです。軸受けの劣化によりモーターの音がかなり大きいので、オーナー様に交換をお勧めしたところ、こころよくOKをいただきました。作業開始です。
内部は綺麗です。右の写真のモーターを交換します。
メカを取り出しました。キャプスタンにテープが大量に絡まりピンチローラーのように見えます。
過去にも一度同様な状態のデッキを修理しました。そのときは裏からキャプスタンを抜いてテープを取り出しましたので、今回も同じ作戦で行きます。
背面の基板を外し、キャプスタンのフライホイールを掴んで引っこ抜こうとしましたが、まったくダメです。
作戦変更です。ピンセットで絡んでいるテープを少しづつ引き出して何とか取り出すことに成功しました。凄い量のテープが絡んでいました。テープ厚の薄い120分テープは、やはり絡みやすいようです。
ようやく整備に取り掛かることができます。初めにテープホルダーを分離します。
カセットを押さえつける樹脂製のダンパーを熱を加えて整形します。
ピンチローラーやヘッドブロックを取り外し、再グリスを行います。
茶色の古いグリスが付着していますので、除去しシリコングリスを塗布します。
固着していた左ピンチローラーの支点部はグリスが固化して白くなっています。CRCでふき取ります。
アイドラーは5年に1度は交換が必要です。この交換だけならメカは本体に組み込んだままできますので5分で終わります。数千円で済みますのでご希望の方はお問い合わせください。
キャプスタンベルトとベルトの当たり面は結構汚れがあります。ベルトは新品交換、当たり面は清掃します。
トレイ開閉とヘッドの上下を行うカムモーターです。ベルトがスリップしていますので新品交換です。
EV用の改良型モーターに交換します。少し加工が必要です。
テープセレクターの検出スイッチは、接点の汚れにより誤動作の原因になりますので清掃します。
ヘッドやピンチローラーの清掃、消磁を行い、メカの整備が完了しました。
動作テストを行います。良好です。調整に移ります。
この機種で心配なのは、VOLの故障です。部品調達が困難なので場合によっては規格外のものを流用しなければなりません。この機体はセーフでした。
テープ速度とアジマスのチェックです。最後に録音再生バランスやdbxの動作状況を確認し修理完了です。