DATデッキに限らず、メカを有するデッキが故障する原因のひとつに「グリス硬化による固着」があります。揮発性の低いグリスも10年、20年と経つうちに次第に硬化します。もともとは滑らかな動作のために塗布しているものが皮肉にも逆効果となってしまいます。
それでもメカの固着で動きが悪いとき、あるいは動かなくなったときは、普通はその部分のメンテナンスで復旧しますが、そうでない場合もあります。
これは、DTC-55ESなどに使用されている樹脂製のギアですが、ご覧のとおり歯が欠けています。こうなる原因は、このギアと組み合わさっている鋼製ギアが固着し、その状態で無理にモーターの力が加わるためです。
まだメーカーの保守期間であれば部品を取り寄せて交換すれば良い話ですが、今となっては、他の機器から流用するしかありませんので修理も厄介ですし費用も嵩みます。
デッキを毎日使用していると、動きが悪くなってくるので事前に察知することができますが、長期間不使用の状態でいきなりテープを再生しようとすると、すでに固まってしまったギアのため、突然昇天します。
ですから、私は不動品の上記デッキは、動作確認しないで修理を行います。動作確認中にギアを壊しては元も子もありませんからね。
大切な愛機は定期的メンテナンスを行わないと痛い目に遭いますのでご注意を。
※DTC-55ESのほか、DTC-500ES、DTC-M100、DTC-300ESも同じメカを採用しています。また、DTC-2000ESなども同様の樹脂製ギアを使用していますが、ゴムベルトで動力を伝達しているため破損には至りません。