世界最初に発売されたEXCELIA(AIWA)のDATデッキ、XD-001の修理依頼がありました。トレイ開閉は問題ないが、テープを挿入してもローディングされずに戻ってしまうとのことです。
ピンボケになりましたが、テープを挿入するとモーターの動作音が聞こえるものの「CAUTION」表示となります。それでは修理に移ります。
トレイメカのギアが綺麗なところを見ると、一度はメンテナンスされていると思われます。
右の写真の中央にあるのが可動式のテープガイドですが、固着してまったく動きません。これがCAUTIONの原因です。まずはトレイメカのメンテナンスを行います。
表面上は綺麗に見えましたが、ギアを外すと固くなったグリスが付着しています。CRCで除去しシリコングリスを塗布します。
ここの箇所も動きが重くなっていますのでメンテナンスします。
大変綺麗になりました。動作も軽やかです。続いてデッキメカに移ります。
メカを取り出すためには底部にある基板のコネクタを外す必要があります。
取り出しました。分解していきます。
構成ユニットはほぼ取り外します。右の写真が固着している可動式テープガイドの取り付け部です。これまでの中で一番固まっていて分解するのに一苦労でした。
リングギアを外した跡をよく見ると、円弧状に傷が付いています。トラブルを抱えていたのでしょうか。
順番に点検整備を進めていきます。ピンチローラーはプロ用のクリーナー「S-721H」で清掃します。
ロータリーエンコーダーのギアはヒビが入り、放っておくとそのうち真っ二つに割れてしまいますので、手持ちの対策品と交換します。中心の軸は少し削ってギアに掛かる応力を減少させます。
モーターの動力をリングギアに伝達するこのギアも滑らかに動くようグリスアップします。
リングギアのスライド部分の固着はありませんでした。非常に珍しいです。
それでも可動部はグリスが固まっています。除去し新たにグリスを塗布します。
続いては2DDのリールメカです。片方のリールはまったくブレーキが効きません。補修が必要です。
ブレーキのパッドがすり減っています。交換が必要です。
大変効きが良くなりました。
ヘッドのモーターをドライブする基板は、息付きの原因となることがありますので電解コンデンサーを全交換します。ひととおり点検補修を終えたので、元通りに組み立て、動作確認を行います。
ところが、テープはローディングするものの、ヘッドが回転しません。どこに不具合があるのでしょうか?ここは問題の切り分けが肝心です。ヘッド自体なのか、ドライブボードなのか、メインの基板なのかを特定する必要があります。
そこで、とりあえず、メカを私が所有しているXD-001にスワップしたところ正常に動作しました。ということは、メイン基板に不具合があるということです。
基板の不具合ということが判明しましたので回路図の出番です。ヘッドのモーターには、本来5Vが印加されるようですが、測定すると約半分の2.85Vしかありません。そこで回路図とにらめっこしながら電圧異常が発生している箇所を探していきます。大変手間のかかる地道な作業ですが、見つけました。
Q502の5Vと5.2Vというところが約半分の電圧しかありませんでした。
中央の緑色した2SB1040というトランジスタです。取り外してチェッカーで確認すると「JUNCTION」と表示されました。故障ですね。このトランジスタは運よくストックがありましたので即交換しました。
見事ヘッドが回転しました。
試運転です。ノイズ混じりの音です。テープパスを点検したところ狂いが見られましたので調整します。
ノイズが消えました。最終チェックでヘッドフォン端子のガリを修正し、録音再生、早送り巻き戻し等が正常に行われることを確認し修理完了です。
XD-001はSONYのDTC-1000ESと中身は同一ですので、音圧の高いダイナミックな音で私の好きなデッキのなかの1台です。今回の機体は長期保管品だったのでしょうか、多くのトラブルを抱えていましたが、適切なメンテナンスを行うことにより無事復活しました。デッキの不具合でお悩みの方は当店までご相談ください。