最近DATデッキの修理を行っていて不安に感じることがあります。以前も記事にしましたが、「ピンチローラーの劣化による硬化」です。
ピンチローラーはDATデッキにとっても重要部品でありますが、もはや新品が入手不可となっている現在の状況において、この問題を解決できなければDATデッキそのものの存続に大きな影響を及ぼします。
ゴム製品は、定期的にメンテナンスを行うことにより延命できることはわかっているのですが、一度カチカチになってしまったものは、ちょっとやそっとでは回復しません。これを解決するために「アメリカンレコーダーテクノロジーズ社のS-721H」に漬け込むことよる復活を以前試しましたが見事に失敗しました。
一方、カセットデッキのピンチローラーはというと、さすがに生産台数が多いだけあって、未だに汎用品の新品が販売されており、最悪交換が必要なケースでもこれらの活用により修理が可能な状況となっていますが、DATデッキのピンチローラーはいくら探してもそのようなものは見当たりません。
結局、「無いものは自分で作るしかない」ということで、DAT用ピンチローラー製作にチャレンジをすることにしました。
SONYではポータブル機を覗き、ピンチローラーは共通部品です。
寸法は、直径が7.3mm、高さが6.3mmです。
硬くなったゴムを取り除くとこのような筒状の金属部品が残ります。この寸法は、直径が5.2mmです。
つまり、ゴム部は外径7.3mm、内径5.2mm、高さ6.3mmとなります。最初は、以前キャプスタンベルト等を発注した国内の工場にこのサイズのゴムを特注しようと考えていましたが、見ていて良いことを思いつきました。
外径7mm、内径5mmのシリコンホースです。ゴムホースも同じサイズが市販されていますが、耐候性を考慮し、こちらを選択しました。
ホースに金属部のパーツをはめ込むと、見事ピッタリ収まりました。
あとはカッターで切断し、接着剤で固定し完成です。シリコン製のため表面のグリップ力が抜群なのは触ってみてわかります。ちょうど修理中のZA5ESがあったので試しに組み込んでみました。
見事正常に動作しました。外径は7mmジャストで標準品よりも少し小さくなりましたが問題は無いようです。テープ速度を制御しているのはキャプスタンであって、ピンチローラーはテープをそこに圧着させるだけの役割ですので、ピンチローラーの外径が多少異なってもテープ速度には影響は出ないのは当然です。
ところがひとつ大きな問題があることがわかりました。再生は問題ないのですが、あまりのグリップ力の良さに早送りや巻き戻し時にテープがピンチローラーに巻き付くことがあります。
グリップ性能の良さが逆に仇となりました。この次はゴムホースを加工してチャレンジしてみたいと思います。