久しぶりにDTC-57ESの修理依頼をいただきました。オーナー様のお話では、昔録音したテープを聴こうと十数年ぶりに電源を入れたところ、ディスプレイ表示がなくトレイは開いたもののテープが閉じ込められたということです。
今回の機体はオーナー様が学生時代にバイトして購入されたものということで、想い出の詰まったデッキでしょうから修理にも普通よりも気合が入ります。
電源を投入しましたが表示が点灯しません。早速カバーを開けて点検を行います。
まずは、手動でトレイを開けてテープを救出します。
電源基板が濡れて一部腐食しています。電解コンデンサーの劣化による液漏れが原因です。
作業がしやすいようにメカを外してから電源基板を取り出します。どの程度のダメージがあるのか心配です。
問題のコンデンサーはガスが発生したせいか頭が膨らんでいます。幸いにも基板のプリント面は汚れはありますが腐食はほとんど見られません。
外してみると汚れがひどいのでアルコールで清掃します。液漏れにより、右写真中央のダイオード、その右側のヒューズ抵抗、その右下のコネクタが破損しています。
コネクタの端子が腐食破損していますので、他のコネクタから端子部のみを移植します。
パーツを組み付けて、本体に戻します。
無事復旧しました。次はメカのメンテナンスです。
まずは目視点検します。テープガイドが途中で止まっています。また、標準のスポンジ製ヘッドクリーナーが付いています。
このヘッドクリーナーはヘッド表面を腐食させますので撤去します。劣化してボロボロです。
ヘッド表面にこびりついていますので、アルコールで慎重に除去します。
メカをひっくり返して基盤を取り外し内部の点検を行います。
白黒ギアの留め具が割れて、今にも外れそうですので抜け止め処置を行います。
テープが閉じ込められた原因はここです。中央の白いギアが固着しかけています。取り外してシリコングリスを塗布します。
ブレーキパッドの点検を行うとともに、抵抗をなるべく減らすために回転部分にはグリスを塗布します。
以上でメカのメンテナンスは終了です。
57ESではこのRFアンプのコンデンサー交換は必須です。見た目はそれほどではありませんでしたが、外してみると、液漏れにより腐食が始まっているのがわかります。新たに取り付けるコンデンサーはリードタイプでも構いませんが、端子の状態が比較的良好でしたので、オリジナル通り基板実装型を取り付けました。
ここで、カセットを照らすランプが点灯していないことに気が付きました。玉切れと思い交換しましたがなぜか点灯しません。
電圧を測定すると0Vを示しました。電圧が印加されていないので点灯しないのは当然です。メイン基板で断線でも起きているのでしょうか?
基板を取り外す前に回路図をチェックです。これはサブボードの回路図ですが、CN556というコネクタの18番に「LAMP」とあります。R364という抵抗を経てここからプラス電源を供給しています。
基板を確認して、あっと驚きました。久しぶりの怪現象です。R364がありません。基板の状態から判断すると元々付いていなかったようです。
別のものになりますが、これが正常な状態です。
抵抗を付け加えて無事点灯しました。なぜ抵抗が無いのかはわかりませんが、この機体は元々ランプが点灯していなかったんでしょうか?それとも過去の修理時にそうなってしまったんでしょうか?今となっては知る由もありません。
動作点検です。ボリューム類にガリがありましたが接点復活剤を塗布し解消されました。不定期にノイズが発生しましたのでRFシグナルを点検しテープパスに若干の調整を行い動作良好となりました。
DTC-57ESは、最も売れたDATデッキですが、多くのウイークポイントを抱えており故障が多いとも言われています。しかし、適切にメンテナンスを行うことにより良好な状態を保つことができますので、同型機をお持ちの方は当店にご相談ください