本日はA&Dのカセットデッキ、GX-Z9100の修理です。トレイ開閉に不具合があるとのことでしたが、併せてメカ分解整備及び録再調整を行うということでオーナー様から依頼を受けました。
電源をONにすると勝手にトレイが開きます。カムベルトがスリップしているようです。
使用頻度が少なかったということで、外装も内側も綺麗な美品です。
メカを取り出すためには、上下計4本の固定ビスを外す必要があるため、底板を取り外します。9100は底板も銅メッキ仕様です。注目してほしいのは、この取り付けビスの位置ですが、取り付け穴が13か所ありますが、そのうち3か所にはビスは元々ありません。そして、なぜか下位機種の7100では、さらに取り付けビスは少なくなっています。
底板を取り外したところです。右側写真はREC VOLですが、7100よりもハイグレードのものが使用されています。
メカを取り出すときはこうやって横に傾けます。なぜかというと、ヘッドのケーブルが引っかかるからです。
この機種によく見られる左右テープガイドの破損はありません。ヘッドはスーパーGXヘッドですので、摩耗の心配もありません。
まずは、カセットトレイを外します。右側写真のようにテープが入るのですが、
右側写真のように樹脂製のダンパーがカセットハーフを押さえつける構造となっています。
GX-Z9100では、トレイは3分割の構造となっていて、右側写真のようにダンパーが取り付けられています。
このパーツは長期間の使用によりヘタリが出て押さえつける力が弱くなりますので、整形が必要です。右側写真のように鉄製の棒に少し広がった状態で取り付けて、曲がりの部分をドライヤーで加熱し整形します。
形が変わったのがわかるでしょうか?
続いて走行系の修理に移ります。写真はバックパネルを外したところです。
ヘッド周りの動作状況を点検しましたが、左側ピンチローラーアームが固着しています。取り外したところ、グリスが乾いて真っ白になっていました。左側のピンチローラーを外したときは、組み立て後にテープパス調整を行う必要があります。
右側ピンチローラー、ヘッドブロックを外します。ヘッドブロックは1mmほどのボール4ケで支えられていますので無くさないよう細心の注意を払います。可動部は古いグリスが固くなって滑らかに動きません。
左写真の茶色いものが古いグリスです。CRCでふき取り、グリスアップを行います。
ピンチローラーは劣化して表面にテカリが見られます。さらに、拡大すると細かいひび割れが起きているのが見られますが、弾力性は失われていませんので、軽く研磨後に専用クリーナーS-721Hで清掃します。
処理後です。明かな違いがあることがわかるかと思います。
元通りに組み立てます。テープパスは後ほど調整します。
左右リールを駆動するアイドラーです。劣化によりかなり硬化が進行していますので新品代替品と交換します。
中心に見えるのはリールモーターです。アイドラーゴムが接触する部分にゴムカスが付着していますので除去し、さらにスリップ防止のため表面をヤスリで荒らします。
わかりにくいかもしれませんが、リールです。ここもスリップ防止のためアイドラーゴムが当たる箇所をクリーナーで清掃します。
続いてメカ背面のメンテナンスに移ります。基板を取り外すとキャプスタンのフライホイールやカムモーターにアクセスすることができます。
使用頻度が少なかったためか、ベルトの当たる箇所にゴムカスは付着していません。右写真は汚れを落としたところです。
キャプスタンベルトも再利用可能な状態ではありますが、折角の機会ですので新品に交換します。
トレイが勝手に開くのは、このカムモーターベルトの劣化が原因です。右の新品に交換します。
中央に見えるのはオートテープセレクターの検出スイッチです。
接点が酸化して黒くなっています。このまま放置しておくとテープセレクターの動作不良が起きますので清掃します。
元通り組み立てていきます。
本体に仮組みし、ミラーカセットでテープガイドの位置調整を行います。
トレイも取り付けて、本体に組み込みます。
組み込むときもヘッドのケーブルがあるため横倒しの状態で行います。ケーブルを通す箇所は狭いので、基板を外さないで行うのは相当のコツが要りますが、馴れたものです。
ここで一度走行状態を確認します。まったく問題はありませんでしたので調整に移ります。
テープスピード、ヘッドアジマス調整を行います。
録再バランス調整を行います。バイアスキャリブレーションも正常です。
ケーブル類をバンドで束ね、カバーとサイドウッドを取り付けて修理完了です。GX機の修理は当店にお任せください。