私が販売したDATデッキを買われたということがご縁で知人となったお客様から、別のデッキの修理依頼がありました。SONYのDATデッキDTC-59ESです。
以前、部品が無いということで修理を断られ、そのままとなっていたとのことです。
故障個所の見当はついていますので動作チェックは行いません。ここであることに気が付きました。
カセットリッドを取り外すために電源を入れてイジェクトボタンを押しましたが「OPEN」表示はでるもののトレイが開きません。
トレイ開閉用のベルトがありません。どこに行ったのでしょうか?
標準のスポンジ製クリーナーが残っています。また、よりによってヘッドチップとくっついています。ヘッドは大丈夫でしょうか?このクリーナーはヘッドに悪影響を及ぼしますので撤去します。案の定、ボロボロです。
やはりドラムにスポンジのカスが付着しています。ヘッドチップの真上ですので、拡大鏡を使いながら慎重に汚れを除去します。
メカを取り出して整備を行います。ここでベルトがメイン基板の下から見つかりました。
ベルトには無数のひび割れが見られます。SONYのこの手のベルトは比較的長持ちですが、使用環境により寿命が大きく異なります。もちろん新品に交換します。
底面の基板を撤去し、リールメカ等にアクセスします。
可動式テープガイドの樹脂製レールが経年劣化により間隔が狭まり、テープガイドが所定の位置まで到達できません。右写真が正常な状態です。
もう片方も同じです。途中で引っかかりますので、ヤスリでレールを少し削り間隔を広げます。
回転部など可動部がスムーズに作動するようにグリスアップします。ブレーキパッドに異状はありません。57ESではウィークポイントとなっているリールモーターのトルク低下もこの機種では問題となりません。
組み付けを終え、試運転です。テープ走行は正常になりましたが、なぜか音が出ません。ヘッドの汚れでしょうか?拡大鏡でチェックしましたが、汚れは見られません。RFアンプの不具合かと思い、内部の電解コンデンサーの状態を確認しましたが、端子部は綺麗で液漏れした形跡はまったく見られません。
メインの基板の故障ということになると厄介です。そこで試しに手持ちのRFアンプと換装してみると、音が出るようになりました。やはりRFアンプに不具合があるようです。
電解コンデンサーを撤去しましたが、基板は綺麗です。この基板は集積化されていて、ほかに不具合があった場合はほぼ修理不可です。写真の写し方が逆ですが、すべて新品に交換しました。さあ果たして音は出るでしょうか?
治りました。液漏れの無い電解コンデンサーで不具合というのはあまり経験がありませんが、ホッとしました。
ひととおり動作チェックを行い修理完了です。