先日DTC-59ESの修理依頼をいただいたお客様からカセットデッキのメンテナンス依頼がありました。
SONYのTC-K555ESJ、かなり新しい機種です。使用頻度が高かったので、ヘッドの交換もお考えとのことです。
メンテナンス前に動作状況を確認します。テープ走行、録音再生に大きな不具合はありませんが、左右バランスに狂いが見られます。
埃が溜まっていますが、目視ではヘッドの摩耗は見られません。バイアスキャリブレーションも正常、ヘッドの交換は必要ありません。
テープパスは正常、ヘッドアジマスは微妙な狂いが認められましたが、許容範囲です。
内部の点検を行います。
不思議なところがありました。このコネクタの受け側がピン数が1つ多い別のものに取り換えられていてます。問題はありませんがなぜでしょうか?
555ESJは初めて扱いましたが、電源部のコンデンサーが他のシリーズよりも巨大です。
メカのメンテナンスを行います。
ヘッドに摩耗による段差はありません。
クリーニングを施し綺麗になりました。
左側リールのブレーキパッドの状態は良好です。
ピンチローラーも問題ありませんが、
表面にテカりが見られますので、専用クリーナーで清掃します。
キャプスタンモーターを切り離します。
ESGやESLでは故障の原因となる電解コンデンサーも端子の腐食は見られませんでしたが、消耗品ですので交換します。
キャプスタンのフライホイールも汚れはありません。軸部に少量のグリスを塗布します。
ベルトも消耗品ですので交換します。
続いてリールメカのメンテナンスを行います。モーターを切り離します。
ESG以降の最大のウィークポイント、アシストモーターのベルトです。すでに対策品に交換されていて伸びはありませんでした。ここも消耗品のため交換します。
テープセレクター等のスイッチです。カバーを慎重に外して接点を清掃します。カバーの抜け止めは簡単に壊れますので注意が必要です。
つづいてロータリーエンコーダーのメンテナンスを行います。
接点を清掃後に接点専用のグリスを塗布します。
元通りに組み立て、テープパスの調整を行います。
ピンチローラーを取り外した後は必ずテープパス調整を行います。適当に合わせるとテープに傷がついたりテープが脱線したりします。
本体にメカを組み込み、再生状態やバイアスキャリブレーションの動作状況を確認します。
テープ速度の点検、ヘッドアジマスの調整を行います。
数種類のテープを用いて作動状況の点検、録再バランスの調整などを行います。
修理完了です。SONYらしい原音に忠実な音です。