先日修理を終えたTEAC V-7010と同じお客様から修理依頼を受けたAKAI社製GX-F80です。
早送りや巻き戻しはできるものの、再生はすぐに停止してしまうとのことです。また、電源をONにすると異音と振動が発生するということです。早速見てみましょう。
綺麗に手入れされています。蓋を開けて確認するとキャプスタンが回っていません。
カバーを開けて点検です。キャプスタンのフライホイールが見えますが、ベルトが見当たりません。
モーターのプーリーに巻き付いているのは・・・
平ベルトが加水分解でフニャフニャになって巻き付いていましたので綺麗に除去しました。振動や異音の原因は、ベルトが無くなってモーターが高速回転したためです。
元のベルトの大きさをタコ糸を使って測定すると、外周が約30cmであることがわかりました。手持ちのベルトはありませんし、前回のGXC-710Dの角ベルトとは違って、バンコードは使えませんので、ネットで発注することにしました。近いサイズで外周約27cmというのがありましたので注文すると翌々日に到着しましたので早速取り付けます。
ベルトを取り付けるためにはフライホイールを固定しているプレートを外す必要があります。手が入らないのでメカを前に傾けてなんとか取り付け成功です。
ところがここで想定外の問題が発生です。ベルトを取り付けて正常に再生できるようになりましたが、異音が発生しています。最初はモーターの軸受けの劣化によるものと思っていましたが、モーターのプーリーのところを観察していると、モーターが回転しだすとベルトがデッキの後方部にスライドし、プーリーのフランジ部に擦れています。停止すると元の正しい位置に戻るのですが、回転するとずれてしまいます。ベルトのサイズが小さくて、テンションによって引っ張られているようです。再度ベルトの発注を行いました。
今度は外周が29.2cmのものです。
前回写真と取り忘れたベルト交換方法です。フライホイールにアクセスするためにはメカを斜めに倒す必要がありますので、メカとつながっている右側のパネルを外します。
メカを固定している左右のビスを外し、手前に傾けるとフライホイールを固定しているプレートの留めネジにドライバーが届きます。そして隙間からベルトを掛けてやります。
さあどうでしょうか?モーターが回転してもベルトが正規の位置に収まっていてプーリーと擦れることはありません。
ベルト交換の後はテープ速度調整は必須作業です。この位置に先の細いドライバーを差し込み速度調整を行います。かなりシビアなので何度も調整を繰り返します。モーターが冷えた状態と温まった状態では速度が変化しますので、十分温まってから調整します。
念のためテープパスも点検します。問題ありません。
テストテープを用いてヘッドアジマスの調整を行います。
録再調整を行い修理完了です。今回はベルトの手配に時間を要してしまいましたが、さすがにAKAIの3ヘッド機だけあって素晴らしい音質です。とても40年前の製品とは思えません。改めてアナログオーディオの良さを見直しました。