少し前に当店からGX-Z7000をご購入になったお客様からGX-Z5000の修理依頼がありました。
現在の状態としては、
(1)再生ボタンを押しても「ガガガ」と異音がし数秒で停止してしまう。
(2)力がよりかかる向きに早送り、巻き戻ししても動かない。
(3)EJECT(停止)ボタンを押してもトレイが出てこないことがある、またEJECTとの際に異音がする。
(4)再生が正常に行われた場合でも、やがて走行途中で巻き取り側が止まり結果として停止してしまう。
(5)コードを動かす等なんらかの拍子に右または左の音が出なくなる(メーターも片側しか反応しない)。
(6)早送り、巻き戻しできた場合でも力弱い感じで回転が遅い。
ということですが、今回はこれまでの修理とはちょっと趣向が異なります。オーナー様はこのデッキで録りためたテープが相当数あり、これらテープを再生するために、録再特性を変更しない整備を希望されました。
ご存じのとおり、再生特性というのは、ヘッドアジマスや再生イコライザーの調整で変化しますので、これらには手を触れないでほしいということです。幸いにも、このデッキは、ヘッドブロックに左右テープガイドが固定されていて、ピンチローラーなどメカの固着が仮にあった場合でもヘッド周りを分解等する必要がありませんので、アジマスを変化させる心配はありません。
トレイ開閉の際にギギギーと大きな金属音が鳴ります。カムモーターの軸受けが摩耗しているようですのでモーターは交換が必要です。
接続されているコネクタすべてを外し、メカを取り出します。A&Dでは同じ形状のコネクタが使用されていますので、注意が必要です。
一番最初にこの部分を修理します。トレイに装備されている樹脂製のスプリングですが、長期間の使用により相当へたりが見られます。このままではカセットハーフがしっかりと固定されません。
加熱整形します。
先ほどとはまったく状態が変わったのがわかるでしょうか?
トレイのガイドピンが取り付けられる箇所にはグリスが固まっていますので清掃し再グリスします。
テープ走行不良はアイドラーゴムの劣化が原因と思われます。
プラスチックのように硬化していて割れてしまいました。右側の新品の代替品に交換します。
ピンチローラーは表面が硬くなってピカピカに光っています。軽く研磨し専用クリーナーで清掃します。
続いてカムモーター周りの整備を行います。
ベルトは伸びが見られました。新品交換します。
ここの接点も清掃が必要です。放置しておくとテープセレクターの誤動作が発生します。
カムモーターも交換し、試運転を行いますが、ここで不具合が発生しました。リールの回転力が非常に弱い状態です。
テープを挿入しない状態で再生ボタンを押し、指でつまんでみると簡単に回転が停止します。アイドラーがスリップしているのではなくモーター自体に力がありません。
リールモーターの劣化が原因です。テープ走行がすぐに停止する原因は、アイドラーゴムとモーターの両方でした。ストックしてある中古品と交換します。左は交換後、右は取り外したものです。
テープスピードは標準よりも2%遅い状態でしたが、オーナー様の意向でそのままにします。念のためアジマスも点検しましたが、ほぼ狂いは無い状態でした。そのほかVOL等の接点メンテナンスや録再バランスの点検を行い修理完了です。