珍しいデッキの整備依頼がありました。テクニクスのRS-B85です。先日記事にしたTC-K222ESGと同じお客様の愛機で、1986年発売、定価89,800円ですから高級機に分類されます。
不具合の状況ですが、「録音時の左右のアンバランス」とTC-K222ESGと同様の「回転ムラ」が最近発生するとのことです。
3ヘッド、シングルキャプスタン仕様です。この時は気づきませんでしたが、ここに秘密が隠されていました。
初めての機種なので、まずは動作状況を確認します。この時点では大きな問題は見られません。
テープセレクタの表示が「Metal」「Normal」両方点灯しています。スイッチの接触不良が起きています。しかし、回転ムラ」は発生しませんので、オーナー様に確認したところ、「回転が悪くなったように聞こえることがある」とのことです。どうやらテープ走行に問題があるようです。それではメカの点検を行います。
メカは、「M」と表示のある底部4本と上部2本のビスで固定されています。ケーブルを外さずに取り出せるので大変整備性が良好です。
なぜか消去ヘッドが傾いています。最初はこれが不具合の原因かと思いましたが、この状態で標準です。
カセットハーフの一部を切り取ったテープで動作状況を点検します。再生ボタンを押すと、ヘッドの上にあるキャプスタン状の軸との間にテープが挟まります。これによってテープにテンションを加えテープ走行を安定させているようです。
その軸にはフェルトのパッドが貼られています。これが劣化して摩擦力が低下しテープテンションが弱まったのが原因です。
A&D用のパッドに張り替えて120分テープ(テープ走行に不具合が発生しやすいため)を用い試運転です。不具合は発生しません。ちなみに赤色のケーブルは、「アース線」です。メカを本体と切り離しているため、ノイズが発生しますので仮設で配線しています。
テープセレクタの接点のメンテナンスを行い、調整に移ります。
テープ速度は2%強の狂いがありました。
ヘッドアジマスを調整します。左右バランスの調整も必要です。
正弦波を左右に同レベルインプットしたところ、バランスツマミを写真の状態にしなければ同レベルになりません。
回路図を確認し、入力端子のすぐ後にある抵抗を半固定式に変更し調整します。
再生、録音レベルの調整を行い修理完了です。