今回依頼のあった修理は、ちょっといつもとは違う内容です。
機種はタイトルにあるとおり、AKAIのGX-93ですが、メカの取り外しと一部分解まではオーナー様で行い、その後の作業を当店がお手伝いするというものです。
メカのみお送りいただきました。プラスチックケースの中には取り外したスイッチ類が入っています。整備後の動作テストやヘッドなどの調整は、修理待ちのGX-Z9000に組み込んで行います。
いつもここから着手します。トレイの両側についているカセットハーフを押さえつけるプラスチック製のスプリングです。長年の使用によりすっかり変形しています。
取り外して、ドライヤーで曲がり部分を加熱しながら整形します。
メカ本体の必要箇所を分解していきます。
右側のピンチローラーアームを外したところです。固着はしていませんでしたが、グリスは乾ききって本来の機能を消失しています。
ピンチローラーー、ヘッドブロック等々を外していきます。
可動部にグリスがたっぷりと塗られていますが、固まりかけていて動きを重くしています。
綿棒を使ってグリスを拭き取っていきます。
綺麗になりましたね。これから組み立てていきます。
可動部にはシリコングリスを塗布します。
ピンチローラーは表面が劣化していますので、軽く研磨し専用クリーナーS-721Hで清掃します。
リールモーターの軸もアイドラーゴムの汚れが付着していますので、清掃します。
アイドラーです。分解された状態で受け取りましたので、ゴムを交換し組み立てます。
左右リールのアイドラーが接する部分はアルコール清掃します。左側のピンチローラーアームは、調整式になっていますので、分解前に位置をノギスで測定しておくと簡単に元の状態に戻せます。ただし、テープパスの点検調整は必ず行います。
これでフロント部は完了ですが、この状態で、ヘッドを手で上部に移動させ、左側リールにどの程度のブレーキが掛かっているか点検します。パッドが古くなると、表面がツルツルになって異常にブレーキが掛かり、その結果、音揺れの原因となるからです。
続いてメカ背面部に移ります。基板を取り外すとキャプスタンやカムモーターが簡単に外れます。
テープセレクターのスイッチ接点の清掃を行い、
カムモーターのベルトを交換、
キャプスタンのフライホイールのベルト当たり面清掃、
あとは元通りに組み立てていきます。
ほぼ完了ですが、
一旦アイドラーを外し、リールモーターに直接電源を接続します。リールモーターは早送り・巻き戻し時は高速で回転しますが、再生時は超低速回転となります。そのため、モーター内部の接点が接触不良気味になることがあります。それでどうなるかというと、再生中に突然モーターが停止してしまいます。その予防として、モーターを連続して高速回転させ、接点の改善を図ろうとするものです。
電源をONにすると電源部に表示されている電圧が次第に上昇し、15分程度経過するとある値で落ち着きますので、そこで作業完了です。
ケーブルを結束バンドで束ねて組み立ては完了です。つづいて動作テストと調整に移ります。
GX-Z9000に組み込みました。GX-93とは録音ヘッドのコネクタ形状は異なりますが、調整は再生のみで行いますので問題ありません。
ミラーカセットを使用してテープパスを点検調整します。テープに傷が付くのはテープパスの狂いが原因の場合があります。
テストテープを使用してヘッドアジマス調整を行います。ヘッド周りの分解を行った後は必須の作業です。この調整で高音域の伸びが変わります。
しばらくの間、動作テストを行い整備完了です。