今日は当店の定番、GX-Z9100の修理です。
オーナー様が新品で購入したデッキということです。しかし、ここ25年ほどは電源を入れていなかったとのことで、トレイが勝手に開くという不具合を抱えています。
開閉ボタンを押すと、一旦は閉まりますが、すぐに開いてしまいます。
GX-Z9100は密閉型の筐体を採用していますので、内部は埃もなく新品のようです。
メカに接続されている上部、下部基盤のコネクタを外してメカを取り出します。
向かって右側のパネルを固定しているビス2本を緩めると、トレイが簡単に外すことができます。GX-Z9100以降の機種にはカセットハーフの振動を吸収するスタビライザーが搭載されています。
些細なことですが、経年でヘタリが見られる箇所は、可能な限り製造時に近い状態に復旧します。カセットハーフを押さえるバネを整形します。加工前後での違いが分かるかと思います。
バックパネルを外すと、古いグリスがところどころで固まっているのが確認できます・
滑らかに動かなければならないところに塗布されているグリスが固まって動作不良の原因になるなんて皮肉なことです。
左側ピンチローラーアームにはテープガイドが取り付けられています。脱着時にはテープパス調整が必須作業となりますので、あらかじめおおむねの位置を測定しておきます。
左右ピンチローラーアームを外しました。可動部の支点となる箇所のグリスが真っ白に固まっています。
ヘッドと関連パーツを取り外し、古いグリスを綿棒を使用して除去していきます。
清掃後です。
ヘッド右側のテープガイドが破損しています。GX機によく見られるのですが、これは、ピンチローラーアームのグリスが固まって動きが悪くなった状態で無理やりテープを取り出したときに起こります。下がり切ってないテープガイドにカセットハーフが引っかかって破損します。
新品は入手不可ですので、中古部品と交換します。この機種以前のモデル用ですので色が黒色です。材質が異なるためなのかわかりませんが、この黒色のタイプで破損が起きるのは稀です。
ピンチローラーの弾力は問題ありませんが、表面にテカりが見られますので、軽く研磨し専用クリーナーで清掃します。
ここも些細なことですが、リールモーターの軸部にアイドラゴムのカスが付着して汚れていますので清掃します。小さなことの積み重ねが重要です。
左右リールとアイドラーです。
リール側面のアイドラーゴムが当たる箇所はアルコール清掃します。アイドラーゴムは劣化して固くなっていますので新品代替品に交換します。
これでフロント部は完了です。
長年不使用だったとのことですので、モーターの慣らし運転を2~30分行います。
続いてメカ背部に移ります。
キャプスタン、カムモーターなどは基板を外すと簡単に取り外すことができます。
カムモーターです。このベルトのスリップによって、トレイが閉まらなくなります。新品のベルトに交換します。
テープセレクターのスイッチ接点の汚れは見られませんでしたが、念のためクリーニングは行います。
キャプスタンのフライホイールもゴムカスの付着はなくおおむね良好な状態でした。
キャプスタンベルトです。まだ使えそうですが、右側の新品に交換します。
キャプスタン軸に微量のグリスを塗布し元の位置に戻します。背面部も完了です。
トレイを組み付けるときのスプリングも忘れずに取り付けます。これ以前の機種にはこのスプリングはありません。
メカの組み立てが終了しました。ヘッドの清掃と消磁も行います。
本体にメカの配線のみを行いテープ走行の点検調整を行います。
ミラーカセットを用いてヘッド左右のテープガイドの位置を点検調整します。
本体に組み込みました。音出しはOKです。
テープ速度の点検もOK.
ヘッドアジマス調整を行います。
バイアスキャリブレーションの動作OK。
録再バランス調整を行い、
配線を元通りにして、
完成です。四半世紀ぶりに蘇ったデッキですが、安価なノーマルテープでも非常に良好な音質です。
GX機の修理は当店にお任せください。