TC-K333ESGの修理依頼をいただきました。
動作不良となったため、オーナー様が自ら内部を確認したところ、ベルトが伸びきっていたとのことです。その際、目視でコンデンサーの液漏れは見られなかったということですが、当店での点検の結果により交換の有無を判断することとなりました。
機器が到着しました。
EJECTボタンを押してもモーター音が聞こえるのみです。
初めに、オーディオ回路の電解コンデンサーの状態を点検します。
再生基板の100μF、
録音基板の1μF、
ヘッドホン基板の100μFなど、いずれも液漏れの形跡はありません。これまでの経験上、液漏れが発生していない機体は全体の2割程度といったところでしょうか。おそらく製造時の部品の納入時期によって異なるのだと思います。
ということで、今回はメカのメンテナンスと録再調整のみの修理となりました。メカを取り出すためにフロントパネル、トレイリッドの順に外していきます。
録音ヘッドと消去ヘッドのコネクタを外すためには一旦再生基板を分離する必要があるのですが、電解コンデンサーに帯電している電流とボディとのショートが起きないように注意が必要です。
メカを取り出してトレイとバックパネルを外します。
左右ピンチローラーを外す前に元々の位置を測定します。
キャプスタンモーターを分離しました。
モーター基板の実装型電解コンデンサーです。ESシリーズのウィークポイントですが、これも製造時期によって状態に差があります。
この機体では比較的良好でしたが、端子の一部がくすんでいますので新品に交換します。
キャプスタンのフライホイールとベルトです。
フライホイールの状態は良好です。軸部に微量のグリスを塗布し元に戻します。ベルトは新品に交換します。
伸びたアシストモーターを交換するためには、左右リールの間に見えるアイドラーを外さなければなりませんが、
アイドラーの支点部が固着しスムーズに動作しません。グリス硬化が原因ですのでアルコール清掃後に再グリスします。
モーターを分離するとようやくベルトにアクセスできます。まったく弾力が無くなっています。
メカの作動状態を検知するロータリーエンコーダーです。
内部の接点が汚れていますのでアルコールで拭き取ってスライド接点用グリスを塗布します。
テープセレクターの検知スイッチもカバーを外して清掃します。
SONYのデッキではほとんどがヘッド表面にサビが出ていますので、軽く研磨を行います。
ピンチローラーは弾力がありますので専用クリーナーで清掃し再利用します。
元通りに組み付けました。
まずはテープ走行のチェックです。音出しもOKです。
ミラーカセットを用いたテープパスの目視点検、測定器によるテープ速度点検、
テストテープを用いたヘッドアジマス調整を行います。
バイアスキャリブレーションの作動状況、録再バランス調整、RECVOLのガリ修正を行い、
この後数時間動作テストを行い修理完了です。