今年の3月に当店のWEBショップでGX-93を購入されたお客様から、「使用中に突然動作不良になった」とご連絡をいただきました。
不具合の状況としては、「デッキ内部のオレンジ色の部分は明るくなる」「カウンター、レベルメーターなどの表示部分が全く点灯しない」「各操作スイッチを押しても何も反応しない」ということです。
症状から判断して電源関連の故障と思われますが、とりあえず機器をお送りいただきました。
機器が到着しましたので、電源を投入してみます。すると、表示パネルの一部が点灯し、メカのランダムな動作が起こりました。そしてトレイが勝手に開いて、表示パネルは真っ暗になってしまいました。
SONYのデッキでも似たような故障が起こります。その場合はリモコン受光部の故障ということになりますが、このデッキにはリモコンはありませんので別な原因ということになります。
早速点検を行います。
内部のケーブルの接触不良ということも考えられますので、電源をONにして内部のケーブルに触れていると、突然ピタリと動作が止まりました。ヒューズが切れてしまいました。しかも2本同時です。
このままヒューズを交換しても、また切れる可能性が高いので、メイン基板とシスコン基板、メカブロックを分離した状態でヒューズを取り付けました。今度は何も起こりません。次にシスコン基板を接続し様子を観察することにしました。ここでも何も起こりません。ただし、表示パネルは点灯しません。
最後にメカを接続すると、
目の前でヒューズがオレンジ色に光り、またしても写真のようになってしまいました。
電源部の回路図です。切れた2本のヒューズは、F3とF4です。ここからシスコン基板に電源を供給しています。ということは、シスコン基板またはメカにトラブルが発生したということになります。
そこで、メカを取り出して修理待ちの同型機に搭載し、動作するか確認したところ、何も問題なく動作しました。
シスコン基板のどこかでショートが起きているようですが、基板を点検しても回路図を見ても不審な点は見られません。以前PIONEERのDATデッキでは、タンタルコンデンサーの故障によるショートで動作不良が起きた例がありますが、このデッキではそういったパーツは使用されていません。
一番の問題は、作業中にヒューズが切れてしまい、不具合個所の特定作業が困難なことです。
そこで、今回は、ジャンク機からシスコン基板ごと移植することとしました。
無事復活しました。
動作も良好です。これまで数多くのGX-93を見てきましたが、このデッキは、その中でも内外装ともに1・2位を争うほどの美品です。今回の修理でこれからもまたオーナー様のもとで活躍されることを期待します。
今回は、特殊な故障で原因の特定までには至りませんでしたが、時間が取れたときにじっくりと基板の状態を確認したいと思います。