先日、一切の操作を受け付けず誤作動し、表示パネルも点灯しないというGX-93の修理を行いました。といっても、根本的な原因の追求が困難な状況から、シスコン基板ごと交換という選択肢を取りました。
この「基板ごと交換」というのは、メーカーのサービスセンターでも人材不足による技術力の低下やコスト面の関係などから、近年、一般的に行われている手法ですが、私のような修理業を営んでいる者からすると、どちらかというと邪道の部類に入ります。
ということで、修理屋の性格上、交換した基板のことが気になってしょうがないので、いろいろと調べることにしました。
基板の故障によりヒューズが切れるということは、ショートが起きているということです。故障によりショートするパーツというのは限定的で、代表的なのはタンタルコンデンサーが挙げられます。
あれこれネットで検索しているうちに「ダイオードは使用状況によりオープンモード(絶縁)とショートモード(短絡)の2種類の故障が存在する」という記事を見つけました。これまでダイオードはすべてオープンモードで故障するものだと思っていましたので、早速基板の点検を行いました。
ダイオードというのは、片方向にのみ電流が流れるというのが基本ですから、テスターのプラスマイナスを入れ替えながら抵抗値を測定します。
すると、プラスマイナスを入れ替えても抵抗値が変わらないダイオードを発見しました。
パーツチェッカーではダイオードと認識できません。やはりこのパーツの故障です。早速ジャンク基板から同型のパーツを移植し、修理待ちのGX-93にこの基板を取り付けました。
すると、表示パネルが点灯するようになり、テープも再生できるようになりました。これで一件落着かと思ったら、そうは問屋が卸しません。再生がすぐに停止してしまいました。調べてみるとリールの回転トルクが異常に弱いのがわかりました。また、早送りではまったくリールモーターが回転しません。ということは、モーターではなく、基板にトラブルが起きているということです。
サービスマニュアルで確認したところ、IC4がリールモーターのコントロールを行っているようです。
IC4というのは、やはりシスコン基板上にあります。ICの故障というのは非常に珍しいケースですが、本当にこれが原因でしょうか?
ジャンク基板から同型のICを移植します。
リールが勢いよく回転するようになりました。ダイオードの故障で不要な電流が流れ、ICを損傷したものと思われます。
これでやっと修理が完了しました。やはりこういった修理はやり遂げたという満足感がありますね。