新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
数日前に修理を終えてオーナー様に返送したTC-FX606Rですが、「リバース側の音がこもっている」とご連絡をいただきました。
ヘッドアジマスは調整済み、音質についても再生テストを行っていますが、何が原因でしょうか?
早速機器をお送りいただきました。最初にSONYのメタルテープで再生確認を行いましたが、音のこもりは感じられません。そこで、何種類か違うテープを再生してみると、確かにオーナー様がお話されたとおり明らかにリバース側の音質がこもるテープがありました。
このデッキはヘッドがテープの進行方向に合わせ180度回転するタイプです。フォワード側は問題が起きていませんので、電気回路の不具合ということはありません。ということは、ヘッドの回転機構に何かトラブルが起きたものと考えられます。
ヘッド周りを観察します。左写真はリバース時、右はフォワードです。リバース時にヘッドがわずかに右側に傾いているのがわかるでしょうか?
ヘッドを触ると、ぐらつきが生じています。回転ヘッドですので、多少のぐらつきはあるのが普通ですが、再生時に傾いてしまってはテープとのタッチが変化し音質に影響します。おそらく回転部分の摩耗などにより傾きが生じたものと思われます。
試しに再生時に先の細いドライバーでヘッドを左側に押し付けると、高域がアップしました。このヘッドには、左右、上下の調整ネジがヘッド横についていますが、ぐらつきによる修正はできません。
それでも、数種類のテープでは音質の差異はほとんどありませんでしたので、その理由を考えてみました。
カセットテープには、ヘッドの当たる位置の裏側に、写真のような金属製の板バネとフェルトが取り付けられており、これでテープをヘッドに押し付けて密着度を高めています。
これは仮説にすぎませんが、この板バネの強さやフェルトの弾力性の違いによりテープとヘッドのタッチの差が発生し、ヘッドがわずかに傾いても密着度が低下しないテープが存在したものと考えています。
このことをオーナー様に説明しご理解を得られましたので、もう1・2日程度様子を見てオーナー様のもとにお届けします。