PIONEER製の4ヘッドポータブルDATデッキ、D-C88の修理依頼をいただきました。約1年ぶりの修理になります。
本機体は、オーナー様が新品購入し、定期的な点検(バッテリー不装着)では正常に動作していたということですが、事情があってバッテリーを装着して電源をONにしたところ、一瞬電源は入りかけたものの、そのまま電源が入らなくなったということです。状況から見て、電源部の故障に間違いありません。
機器が到着しました。一切動作しません。
ポータブル機は分解組立がパズルのようになっています。「底板」「リヤパネル」「サイドパネル」「フロントパネル」の順に取り外すのですが、
フロントパネルは4本のビスで固定されていますが、うち一本は写真中央奥にあり非常にわかりづらくなっています。
ここからが問題です。サービスマニュアルと1年前の記事を確認しながら作業を進めます。
トレイは、閉めるときは手動ですが、開けるときは電動になっています。しかし、電源が入りませんので、そのままでは開けられません。
そこで、写真の位置にドライバーを差し込むと簡単に開くようになっています。
蓋を留めているビス2本を外します。
ドライバーでヒンジのハメコミ部をこじって蓋を外します。右写真を見るとわかると思いますが、ハメコミの凸部が左側のほうが長くなっています。ということは、外すときは右側から、取り付けるときは左側からということになります。この構造を知らないとおそらく破損させてしまうでしょう。
電源基板が現れました。
上面のパネルも外して基板をひっくり返します。
黒いトランジスタの形をした2本足のパーツがヒューズになっています。テスターでひとつずつ点検していきます。前回と同様IC2が破断しています。
1年前に取り寄せたパーツがありますので交換します。
電源が入りました。
組み立てる前に念のためテープパスの点検を行います。背面に専用端子が設けられていますのでそこに機器を接続します。
綺麗な波形が出ています。
元通りに組み立てて、デジタル、アナログ(LP、SP、WIDE)モードでの録再状態を確認し修理完了です。
この機種はポータブル機でありながら、4ヘッド、ハイサンプリングモードと据え置き機以上の機能を装備したハイスペックマシンです。残念ながらバッテリーが入手不可のためポータブルとしての使用は難しくなりましたが、洗練されたデザインは室内の装飾にもマッチするのではないでしょうか。パイオニアのデッキも素晴らしいですね。