以前当店にDATデッキ3台の修理依頼をいただいたお客様から今回はカセットデッキの修理依頼をいただきました。
TEACのV-6030Sです。1994年頃発売、当時70,000円で販売されていましたから中~上級機に位置付けられます。
「まったく動作しない」ということです。お話があったときはベルト切れだろうと思っていましたが、機器が到着し同封されたメモには、「3年ほど前に近郊のオーディオショップで一度修理を行った」「ときどき電源が入らない」と書かれてありました。
メカの不具合は別として、電源については「ときどき」ということですので厄介な修理になるかもしれません。
電源を入れるとキャプスタンモーターの回転音が聞こえますがイジェクトを押しても無反応です。また、オーナー様のお話通り、何度か電源を入り切りすると電源が入らないときがあります。
とりあえずカバーを開けて電源を点検します。「常時発生しない不具合は接触不良が原因」がセオリーですので、不具合個所を探します。
本体右後部に電源SWがあります。この形式のSWは、さまざまなオーディオ機器に使用されています。私が所有するプリメインアンプPMA-780Dにも同型が使用されているのですが、10年ほど前にSWが故障して交換した経験がありますので、まずはここを点検しましたが問題ありませんでした。
電源部周辺のコネクタやパーツも点検しましたが異状は見られません。
ここで、あることに気が付きました。表示パネルは点灯していませんが、キャプスタンは回転しています。ということは、電源は正常で、表示パネル周辺に接触不良があるということになります。そこで、ここの修理は後回しにすることにしました。
前面の化粧パネルを外し、メカ後部がかなり狭いのでフロントパネルも少し前面に引き出した状態でメカを取り出します。このメカは他機種にも採用されていてこれまで何度か修理したことがあります。
向かって正面右上にリーフSWが見えます。このSWがメカの動作状況を検知しています。接点が黒く酸化していますので清掃します。
写真は撮り忘れましたが、キャプスタンベルトと左リールのバックテンションベルトはすでに交換済みで状態も良好でしたので再利用します。
これでメカは動作するようになりましたが、問題は電源です。
メカを本体に組み込んだ後のことですが、少し前方に引き抜いたフロントパネルを元に戻そうとしたところ、
この写真はディスプレイ基板の接続部です。コネクタ形状になっていて差し込むだけです。ところが、フロントパネルを一旦分離した後に元に戻そうとはめ込んでも奥までは刺さりません。コネクタの接触不良で表示パネルが点いたり消えたりします。
写真のようにコネクタ部を指で押し付けてやると奥まで刺さります。これで表示パネルが消えることは無くなりました。その後症状は出なくなりましたので、不具合の原因はここの接触不良だったということになります。
以前修理した際に差し込み不足があったのかもしれませんが、今となっては知る由もありません。
本体にメカを組み込んで動作テストと調整を行うのですが、
メカ上部のこのプレートを戻してやらないとカセットホルダーが開かない仕組みになっています。
まずはテープパスの点検です。問題ありません。
メカ背面のプレートに穴が開いていますので、そこに細いマイナスドライバーを差し込んでテープ速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの狂いはありませんでした。録音再生レベル、左右バランス調整を行います。
完成しました。
左右独立したバイアス調整ができるようになっています。操作ボタンも業務機器を彷彿とさせるデザインとなっていてなかなか個性的かつマニアックな機種です。音質は文句なし、さすがTEACですね。