お客様から「修理リストには入っていないが、TEACのV-970Xの修理は可能か?」というメールをいただきました。再生・早送り・巻き戻しいずれも不可で、モーター音は聞こえるとのことです。
同機種については当店では扱ったことはありませんが、以前修理したことのある下級機のV-870とはメカは同一ですので、修理をお受けすることとなりました。
キャプスタンが回転していませんので、ベルト切れが起きています。
早速カバーを外して点検します。
モードベルト、キャプスタンベルトいずれも無くなっています。
以前870を修理したときは少し戸惑いましたが、上2本、下3本のネジでメカが固定されています。メカを取り出して整備に移ります。
キャプスタンモーターが取り付けられたフライホイールのバックパネルを外します。
ベルトは加水分解で溶けた後、今度は固まりかけていました。アルコールで拭き取ります。
モードベルトは跡形もなくなってます。新品を取り付けます。
続いてリールユニットを分離します。
リールを回転させるアイドラーゴムを新品交換します。
元通りに組み付けます。
テープセレクターのスイッチ接点を清掃します。
ヘッドとピンチローラーの上下の動きが重くなっています。古いグリスが固まりかけているようです。分解して再グリスする必要があります。
ピンチローラー一体型のテープガイドの脱着を伴いますので、元の位置を測定しておきます。
ピンチローラー、ヘッドユニットの順に分解していきます。
古いグリスはすべて除去し、シリコングリスを塗布します。
ヘッドの上下動がかなり軽やかになりました。
ピンチローラーは表面を軽く研磨し専用クリーナーで清掃します。
元通りに組み立てて本体に戻します。
テープパスを点検し、
315Hzのテープで速度を調整します。
ヘッドアジマスはOKでした。と、ここまで順調でしたが、録音ができません。厳密に言うと、レベルが極端に小さく、VOLMAXでやっと聞こえるといった状態です。
両CH録音不良ということは、録音回路への電源ラインに不具合が生じている可能性がありますが、まずはRECVOL周辺を点検することとしました。
ところが、TEACのデッキは、基板の構成が特殊で簡単には分解できません。ディスプレイ基板のコネクタがメイン基板に直接刺さっているので、フロントパネルごと前方に引き出すことができません。
DBX基板を外し、機器内部からフロントパネルとディスプレイ基板を留めているネジ数本を外してからフロントパネルの固定ネジを外して前方に引き出します。そうすると写真のような状態になります。これでようやくRECVOLにアクセスできます。
RECVOLの隙間に接点復活剤を少量注入し、何度か回転させると、
復活しました。最初は酷いガリ音が出ていましたが、使用に差し支えないレベルまで復旧することができました。通常、VOLが原因の場合は片CHのみ不具合が発生することがほとんどですので、両CH同時というのは珍しい故障です。
dbxがON、OFF両方の録再レベル調整を行い、
修理完了です。